内容説明
西洋絵画史上、とりわけルネサンス期に好んで描かれた「受胎告知」のテーマ。この深遠な物語の意味を、神学、神話学、人類学、医学・生理学史、ジェンダー論といったさまざまな観点から包括的に明かすと同時に、多様な図像の変遷を初期キリスト教時代にまで遡り、エポックたるレオナルドの“受胎告知”を中心に、線遠近法、感情表現等々、画家たちの創意を検証する。気鋭論者二人による特別書下し。
目次
1 ルネサンスの“受胎告知”(「受胎告知」とは何か;その子はいったいどこからどうやって来たのか?;感情表現と線遠近法;演じられた「受胎告知」)
2 レオナルド“受胎告知”解体(ウフィツィ作品の特異性と帰属問題;思索の起点としての“受胎告知”)
著者等紹介
岡田温司[オカダアツシ]
1954年生まれ。京都大学大学院博士課程修了。京都大学大学院教授。西洋美術史
池上英洋[イケガミヒデヒロ]
1967年生まれ。東京藝術大学大学院修士課程修了。恵泉女学園大学助教授。西洋美術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
57
前半では神学、美術史などの観点から「受胎告知」の意味を探究する。そして、後半はいよいよレオナルドの『受胎告知』が俎上に乗せられ、様々な角度からの検証が加えられてゆく。レオナルドの主要な特質は以下の3点。①天上と地上という縦の軸線がない②線遠近法が強調されない③デッサンの微妙な狂いをはじめ、わからないものが描かれている―著者がこれらの問題点を克明に、しかも鮮やかに解き明かしてゆく手腕は実に見事だ。数ある『受胎告知』の中でもひときわ燦然と光る(私見ではNo.1)レオナルドのそれは20歳の時の作品なのだ。2013/04/30
Fumoh
6
レオナルドの若い時に描かれたとされる「受胎告知」ですが、同様の「受胎告知」という福音書のモチーフは、様々な画家が書いている。それらを見比べていくと、様々な聖書の解釈やジェンダー論、物語性の導入、透視画法の応用の違いが見えてくる……というもの。これはルネサンスの画家たちのリアルな姿を理解するうえで非常に面白い論考だったと思います。続いて、レオナルド自身が描いた「受胎告知」の解題をしていくわけですが、まず帰属の問題がある。つまりこれは本当にレオナルドが描いた作品かどうか、確定的な情報はなく、他作品の特徴など2025/05/04
午後
6
前半では岡田温司による受胎告知の主題の神学的背景や、図像学的な特徴が膨大な例示と共に解説される。受肉の教義の表現、聖母の複雑な感情表現、線遠近法の発達を軸に、数々の図像を次々に読み解いて行く手つきの鮮やかさ!ルネサンス期に盛んであった宗教劇と絵画美術との関連について述べた部分は他に読んだことがなく刺激的だった。後半の池上英洋によるレオナルドの受胎告知分析では、作品の分析を通じて当時の工房のあり方や、若きレオナルドの修行時代が次第に立ち上がっていく様がスリリング。2021/03/05
takakomama
4
前半は「ルネサンスの受胎告知」の概要、後半はレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「受胎告知」を詳しく解説。多くの画家が「受胎告知」の絵画を描いています。聖史劇が教会や公共の場で演じられていたそうです。2007年にダ・ヴィンチの「受胎告知」が来日した「天才の実像展」をきっかけに書かれた本。2023/06/13
もちもち
4
なるほど、受胎告知の絵ひとつとってみてもこれほど多くの画法とそれについての解釈があるのか…。この時代の画家たちがこぞって線遠近法に魅了されている姿も面白い。前半部は主に受胎告知という主題について詳しく書かれており、マリアの仕草から解する心情、精霊の象徴や影の意味など、大変興味深い内容。後半はそれを踏まえてダ・ヴィンチの受胎告知について比較検討を進める。画家が特定されているように見える絵画でも、実は怪しいものがあるとは…。ダ・ヴィンチの若い頃は実は、無学で平凡な画家であったなど、すこし元気の出る話だ。2012/05/22
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