内容説明
『古寺巡礼』や『風土』などで広く読書人にも愛され、近・現代の日本思想史に輝きつづける巨星、和辻哲郎。本書は、大学生の時代から公私にわたりその恩顧を受けた著者による渾身のライフワーク。第一部では和辻の実人生上の諸事件から「人間性」が、第二部では和辻倫理学の核である「人間論」が解明される。実存と思想の両面から照射された、必読の和辻論。
目次
第1部 和辻哲郎の人間性(停年退職にさいして;津田左右吉博士事件公判における証言;阿部次郎との絶交事件;藤岡蔵六事件;和辻哲郎の思い出)
第2部 和辻哲郎の人間論(序論;人間の原文的自然の問題;仏教的空観の立場;人間論としての和辻倫理学―その原理論の概説;国民道徳論からする人間論の生成)
著者等紹介
吉沢伝三郎[ヨシザワデンザブロウ]
1924年、大阪生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業。東京都立大学名誉教授。2003年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
8
「天野貞祐氏が述べておられるのは、主として生活や交際の面での和辻の意志の強さについてだが…むしろ和辻の著作ないしは著作活動そのもののうちに具現されている和辻の意志力に、かねて畏敬の念を深くしている…昭和九年に…『倫理学』の筋書きを簡潔に叙述している。『倫理学』が実際に公刊されたのは、上巻が昭和十二年、中巻が昭和十七年、下巻が昭和二十四年である…その間約十五年である。しかもそれはわが国が世界的な大動乱の渦中に巻き込まれた時期に当たる。それにもかかわらず、当初の筋書きは、ほとんどそのままの形で実現されている」2022/02/15