内容説明
二十世紀を代表する知性といわれるヴァレリー。驚くべき多様な領域にわたるその批評から二十二篇を精選し、すべて新訳でおくるライブラリー・オリジナル・アンソロジー。抜きん出た見通しをもった文明批評から『カイエ』のエッセンスといえるアフォリズムまで、発表年代順に編む。下巻は、「地中海のもたらすもの」「人と貝殻」「デカルト」「ヴォルテール」など、一九三〇年から四五年までの十二篇を収める。
目次
海への眼差し
『パンセ』の一句をめぐる変奏
コローをめぐって
マネの勝利
地中海のもたらすもの
舞踏の哲学
人と貝殻
パリの存在
デカルト
対東洋
身体に関する素朴な考察
ヴォルテール
著者等紹介
ヴァレリー,ポール[ヴァレリー,ポール][Val´ery,Paul]
1871‐1945。フランスの詩人、批評家、思想家。はやくから詩作を始め、文学、芸術、思想、その他あらゆる領域にわたって厳密な思考の探究を試みた。1925年アカデミー会員に選ばれ、35年からコレージュ・ド・フランスで講義を行う。生涯書きつづけた思考の記録である『カイエ』は、3万ページという膨大な量にのぼる
東宏治[アズマコウジ]
フランス文学者。1943年生まれ。同志社大学教授
松田浩則[マツダヒロノリ]
フランス文学者。1955年生まれ。神戸大学教授
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感想・レビュー
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マウリツィウス
23
【カイエ詩学/試論】ポール・ヴァレリーの諧謔性が可能とした『レオナルド・ダ・ヴィンチ』方法論序説を展開していくに辺り最重要事項化された領域内ではボルヘス経由とされた福音書的新約解釈は否定されることで弁証法批判が成されていく。つまり異教主義的見地をも否定する汎神論的立場の由来こそが《合理主義》=《科学主義》だと主張するこの著者は哲学書晦渋性を指摘し尽くしている側面をも踏まえることが可能だ。数学/論理学観点の採用認識は古典主義的でありギリシャ的、この素養分類を非常に解明発揮した試験導入論に『カイエ』原型確認。2013/07/05
Bartleby
13
海岸で手にした貝殻を見つめながら人間の制作したものと自然が生み出したものとの違いに思いをめぐらせていく「人と貝殻」、『パンセ』の有名な一句を取り上げ、そこに含まれた作為に対し厳しく批判したパスカル論、その他にもデカルト論やマネ論など幅広いテーマの文章がセレクトされており、どの一篇からもヴァレリーの豊かな感性と知性の鋭さが堪能できる。2016/01/20
ラウリスタ~
6
下も十二分に面白かった。ヴァレリーは晦渋な作家というイメージが先行しすぎているのかもしれない。パスカル、モンテーニュ、ヴォルテールらの系譜に連ねて読むといいのかもしれない。注文に応じて書いた論説文だから、文学作品のような労作でもないだろうし、読みやすい。逆に注文に応じて書いた作品のなかで、これほどまでにヴァレリーらしさを発揮しつつ、対象を書ききる力がすごいのかも。マラルメやポーに関する著作が多かった上巻と比べると格段に読みやすい。こっちが上だったらもっと敷居を下げれたのにとも思う。2012/04/20
sk
3
「コローをめぐって」、「マネの勝利」、「人と貝殻」だけ読んだ。現代思想的な、安易な手法に惑わされず、ひたすら人間の精神の動きを言語化しようとするヴァレリーのエクリチュールはきわめて知的。「マネの勝利」は正統なマネ論。2011/02/12
makarinx
2
「コローをめぐって」と「人と貝殻」がおもしろかった。2009/11/27