内容説明
どんな上等なものでも、しまっておいたら必ず顔色が悪くなる。私は毎日そばに置いて荒っぽく使っている。時に瑕がついたり、はげたりするが、道具はそこまでつき合わないと、自分の物にはなってくれない。高いものだからといって棚の上に飾るだけでは生きてこない。…そんな白洲正子の民芸観をまとめたオリジナル版。
目次
木は生きている
黒田辰秋―人と作品
黒田乾吉―木工を支えるもの
志村ふくみ―花の命を染める
吉岡常雄―お水取の椿
荒川豊蔵―牟田洞人の生活と人間
北大路魯山人―世紀の才人
魯山人のこと
横石順吉―贋物づくり
青山二郎―余白の人生
友枝喜久夫―老木の花
日本のもの・日本のかたち
著者等紹介
白洲正子[シラスマサコ]
1910年、樺山愛輔の次女として東京に生まれる。6歳から梅若六郎(後の二世梅若実)に入門し能を習う。29年、白洲二郎と結婚。42年、鶴川村能ヶ谷に移り住む。この頃、細川護立に古美術について教わり、壷中居、繭山龍泉堂など骨董屋通いを始める。河上徹太郎の紹介で、小林秀雄、青山二郎、今日出海ら文士と交流を持つ。56年、染織工芸店「こうげい」の経営に携わり、多くの工芸作家を見出す。『巡礼の旅』や『かくれ里』の取材を通して日本人の信仰を体験する。98年、死去(享年88)
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感想・レビュー
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R
36
様々な分野の匠について、美という軸で語ったエッセー集。白洲正子による、人物伝、あるいは匠伝といった感じで読みやすく面白い。木工や染色、能など、様々な分野の匠が見せる美について、その姿を柔らかくとらえようとする文章が素敵で読み応えある。内容としては、やはり、青山二郎、魯山人に語ったものが図抜けて面白くて、逸話と人物評が、まさに見てきた人の言という感じでとてもよかった。美というものへの挑み方というようなスタイルが見える文章であるが、純粋に挿話も面白くて、魯山人を引っ叩いた話は大笑いした。2022/07/06
Tadashi_N
13
美しい物を愛でるための執念を感じた。2023/10/09
えいこ
7
今の年齢に至ってようやく白洲正子の文章がすっと入ってくる。若いうちは興味を保てなかった事柄にぐいぐい引きこまれる。匠の人物伝といったところであろうか。白洲正子のつき合い方、そして知りたいという取材力なのだろう。どの人物も大層魅力的なのである。型を極めていくことで滲み出るもの、ものの本質を追求していく中で表れてくる美、その描写が生き生きとして興味深い。芯の通った気持ちよさを味わう。2023/11/04
大五郎
1
白洲正子が語る匠たちの姿は神格化された職人ではなく、当時を生きる賢明な作家たちであった。彼らも悩み、壁にぶつかり、その上で素晴らしいものを生み出した。 美の本質は切り取ったが作品集や美術館ではなく、当時を生きる匠の中にあった。これを読み切り取ったものから、当時の匠たちのことに想いを馳せることの大切さを思い出すことができた2021/06/09
雨巫女
1
NHKのドラマの影響で読んだけど面白い。正子さんの着眼点がいいな2009/03/14