内容説明
万葉の自然はすっかり姿を変えてしまったが、万葉びとの歌心はしっかりと今に息づいている。日本各地にある万葉の地を訪ね歩き、草陰にひそんでいる古代の人の足跡、風のそよぎに感ぜられる万葉びとの詩情を、時代と風土との関わりのなかから説き起こす、「犬養万葉」の集大成。全3巻完結。
目次
山陽
四国
九州
山陰
北陸
万葉の終焉
著者等紹介
犬養孝[イヌカイタカシ]
1907年、東京生まれ。1932年、東京帝国大学文学部国文科卒業。その後、大阪大学教授(56~70年)、甲南女子大学教授(71~81年)を歴任。87年、長年の万葉集研究の業績から文化功労者に選ばれる。98年、死去
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感想・レビュー
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KAZOO
76
大和、関西、東国以外で詠まれた万葉集の歌が収められています。この巻ではやはり中国との距離の近かった九州での歌がかなり多くあります。また北陸にも萬葉集の歌が多いのは、大伴家持が5年間も越中にいたからということがあるからのようです。最後に「万葉の終焉 因幡の雪」ということでの家持生涯最後の歌が記されています。万葉集を何年かおきに読み直すのもいいものですね。2025/06/08
はちめ
12
1960年代に島嶼部も含め本書に掲載されている全ての場所を訪れた著者に敬意を感じる。文章中にバスで50分とかの表現があるが、多くは公共交通機関を使ったのだと思う。 それにしても思うのが、万葉人はどうしてかくも多くの地名を歌に詠みこんだのだろうか。古今集においてはこのような特徴は見いだせないと思うのだが。万葉集の時代は大和朝廷の王権が東北などを除き日本列島の津々浦々に及んだ時代で、歌に地名を詠み込むことが大和朝廷の権威を地域に及ぼすような意味合いがあったのだろうか?☆☆☆☆☆2020/07/24
はちめ
8
九州は身近な地域が多いので親近感が湧く。越中は身近ではないが、家持の作品のレベルが高く、また、この時期は家持にとって充実した時代なので読んでいて気持ちが良い。 上中下3巻を読み直して思うのは、昭和30年代に現地を訪れ本書を執筆するのは大変だっただろうなという思いと、そのおかげで、千年前に万葉の歌人たちが見たであろう景色を彷彿させる写真を何枚も見ることができることへの感謝の気持だ。昭和30年代は最後の機会だったと思う。☆☆☆☆☆2022/07/16