内容説明
子供の犯罪は親の責任なのか?戦争責任とは?環境への責任とは?そして、未来に対するわれわれの責任とは?本書は、これらの具体的な問題を通して、これからの時代をいかに生きるべきかを徹底的に問い、21世紀の新しい思想を構想する。主著『トランスクリティーク』への入門としても最適。
目次
親の責任を問う日本の特殊性
人間の攻撃性を認識すること
自由はけっして「自然」からは出てこない
自然的・社会的因果性を括弧に入れる
世界市民的に考えることこそが「パブリック」である
宗教は倫理的である限りにおいて肯定される
幸福主義(功利主義)には「自由」がない
責任の四つの区別と根本的形而上性
戦争における天皇の刑事的責任
非転向共産党員の「政治的責任」
死せる他者とわれわれの関係
生れざる他者への倫理的義務
著者等紹介
柄谷行人[カラタニコウジン]
1941年、兵庫県尼崎生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学英文学修士課程修了。漱石論「意識と自然」で第12回群像新人文学賞受賞。近畿大学教授、コロンビア大学比較文学科教授
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感想・レビュー
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ころこ
38
語り下ろしで平易であり、章立ても明確だが、欠点も明らかになる。当時の社会的事件や戦後の問題の見解が述べられるが、社会的な発言は平凡だ。何度か加藤典洋に言及するが、決めつけが酷い。読解する気が無い=ある平場の問題に即応できないのは、むしろ著者の弱点を露呈している。他方で精神分析、哲学のような抽象的な話題では、キレのある見解が随所に語られる。自由と義務の相反する問題に対して、カントにおける調停が本書の軸となる。スピノザを構造主義に、自由を取り戻そうとしたカントをポスト構造主義(つまり自分)に巧みにたとえる。2023/01/19
ジャズクラ本
13
◎カントなど著名な哲学者や思想家が出てくるが、その仔細を知らずとも著者が誘導してくれるので比較的読みやすい。ただ、著者の誘導ということは著者の解釈なので盲目的な追従は禁物かと。現に親鸞の「悪人正機説」なども人によって解釈に微妙な相違が生じやすいところ。筆者の思想と僕の思想には隔たりがあり、本書で当然のこととされる論が僕には当然でないため着地点には相違が生まれる。この点、更に詰めた論が読みたかったが高々200頁の本書にそれを求めるのは無理な話か。ただ仔細には首肯できる点も数多く、是々非々で興味深く読めた。2021/12/04
ichiro-k
12
前半はダラダラとしているが、後半の「戦争における天皇の・・・」「非転向共産党員の・・・」は興味深く読めた。2013/10/07
東京湾
9
認識なき責任の如何。少年犯罪における親の責任とは何か。少年という一個人の「自由」な主体を認めることが、本来の「倫理」的姿勢と捉え、親を糾弾する世間の「道徳」の相違を唱える。原因究明と責任追及は別なのだ。そもそも「自由」自体が至上命令により義務として課されることで「責任」と一体となり存在するものである。そして戦後日本の命題の一つである戦争責任。これをどのように考えていくか、それは世界を認識し歴史を見直すことから始まる。カント哲学の観点から展開される明晰な論考。また勉強した上で読み直したい。2020/03/18
柳田
9
どうなのだろう。かなり読みやすく、もちろん学問的な本では無いので、斜に構えて読むわけだが、やはりどれくらい本気で書いているのかよくわからない。そして、どれくらい妥当なことを言っているのかどうかもよくわからない。まあ、M先生のいうように柄谷をちゃんと読むためにはいろいろたくさん勉強する必要があるのだ。2018/08/12