内容説明
『怒りの葡萄』で知られる文豪が晩年に語ってやまなかった古典的アメリカ論。代表的アメリカ人による自画像の試み。
目次
1 多様の統一
2 逆説と夢
3 人民の政府
4 人種は平等につくられた
5 アメリカ人という種
6 幸福の追求
7 アメリカ人と国土
8 アメリカ人と世界
9 アメリカ人と未来
著者等紹介
スタインベック,ジョン[スタインベック,ジョン][Steinbeck,John]
1902‐68。カリフォルニア州サリナスに生まれる。アメリカ人作家。ニューヨークで死去。スタンフォード大学で主に海洋生物学を学ぶが中退。新聞記者、人足などをしながら創作を続け、短編『二十日鼠と人間』(1937)で絶賛を博す。オクラホマ農民の西への移動に同行した体験をもとに書いた長編『怒りの葡萄』(1939)でピュリッツァー賞を受賞、一躍人気作家となる。写実と叙情、ユーモアと社会性が評価されて、62年ノーべル文学賞を受賞。愛犬チャーリーとのアメリカ旅行記『チャーリーとの旅』(1962)などで、「アメリカとは何か」を執拗に探求した
大前正臣[オオマエマサオミ]
1923年生まれ。評論家・翻訳家。東京大学文学部卒業後、コロンビア大学に学ぶ。電通、東京新聞外報部を経てフリーになる
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感想・レビュー
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のっち♬
90
『チャーリーとの旅』で全土を旅し、差別の横行するアメリカの現状に直面した著者が「多様の統一」を提唱したことは、後に多元文化主義から批判されようが、当時の混沌とした情勢を鑑みれば心情は察せられる。黒人や先住民の人種差別の告発は積極的で、教育ママ、過保護、無倫理、環境破壊、民主主義の欺瞞、選挙の狂乱など矛盾に満ちたアメリカ現象を痛烈に列挙する際も、ユーモアやシニシズムの中に大人になり切れない不節制を親しみを持って温かく見つめる著者がいる。畢竟、彼は伝統的なアメリカ精神による解決に漠然と賭けるしかなかったのだ。2024/09/29
James Hayashi
27
副題にある通りエッセイだが論文的な内容。書かれたのは50年ほど前で少し訳が古めかしいと感じる。移民で成り立つ国家を著者の目で分析し、危惧意識を訴える。2017/09/12
どらがあんこ
10
逆説たっぷり愛を添えて描く。アメリカ人が好きになった訳ではないけど、苦労してるんだなぁと。2019/07/11
テツ
4
元々スタインベック好きだし何となくフロンティアスピリッツ的な物に憧れるので興味深く読めました。アメリカに来た移民達はどのようにして「アメリカ人」となったのか。そもそも多種多様な人種が暮らすアメリカにおいて「アメリカ人」とはどういうことなのか。新たな移民との力関係等も興味深い。アメリカって何というか、巨大な実験場みたいだよなあ。僕はあの何事にも下品なほどに旺盛なメンタリティはそんなに嫌いではないけれど。2013/04/13
てり
3
原著は1966年発行。ゴリゴリの冷戦下、ベトナム戦争の時代、カウンターカルチャーの勃興の中のスタインベックのアメリカ観といった感じで興味深い。最終章「アメリカ人と未来」では、眉をひそめながらも温かい視線を送る年長者といった語りが印象的。彼がつむぐ物語のようだ。2022/04/28