内容説明
第二次大戦中、対外宣伝誌『FRONT』はいかに計画され、岡田桑三、原弘、林達夫、太田英茂、木村伊兵衛など東方社の人々がどのように関わっていったかを初めて明らかにする。本格的グラフ誌のモンタージュ手法、編集・視覚効果の圧倒的な宣伝力と素晴らしさを、多数の図版で紹介。
目次
序章 1941年秋
1 ふたつの大戦の狭間で
2 それは対ソ宣伝計画から始まった
3 日米開戦前夜、写真取材始まる
4 スタートした戦時国家宣伝
5 連合国に届いていた『FRONT』
6 内外の危機に揺れる東方社
7 軽量宣伝物『戦線』と、つくられた写真
8 戦局悪化のなかの外地取材
9 空襲で次第に機能を失う東方社
10 東方社最後の日々
終章 1945年秋
補論 『FRONT』、その制作現場
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
馬咲
4
本書の主役である東方社は、陸軍参謀本部の傘下で戦前から戦時にかけて対外向け国策宣伝を担った機関。「報道写真」の積極的導入など、日本における本格的グラフィック出版の先駆者であり、現代に通じる宣伝広告技術のパイオニアと言える。著者もメンバーの一人だった。主要メンバーは今ならグラフィック・デザイナーと呼ばれるような分野のエリート達だったが、彼らは戦時統制経済とその他検閲の影響で一般の商業宣伝の仕事は失っており、国策宣伝への参加以外で培ったその手腕を発揮することは困難な状況だったことには留意すべきだろう。2024/09/22
えだまめ
1
流し読み。近代戦争史好きには、戦争プロパガンダとしてのグラフィックって妙に惹かれるところがある。大東亜戦争の理想とその戦意高揚の一端は民間の会社が担っていたのか。 FRONT復刻版を見てみたいのだが、すごい値段。 2025/01/05
つれづれ
0
デザイン史としても、戦時中の若者の生活の記録としても、興味深く読める良書だった。木村伊兵衛、原弘の格好良さ。ほか岡正雄、中島健蔵ら、古書でいつも出会う人々が生きている姿が描かれ、人間としての肌触りを感じながら、残された作品に触れられるようになったように思う。関連書をもっと読みたい。2024/12/30
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