内容説明
「(勝小吉は)42歳になった天保14年におのれの放埓な一代のことを『夢酔独言』と題して、書いて残した。この時代の武士になかなかないことで実に率直に、無邪気な程度に隠すことのない自伝である」と大仏次郎が評した表題作に、『平子龍先生遺事』を収録。江戸時代の庶民の声が蘇える。
目次
夢酔独言(鶯谷庵独言;夢酔独言)
平子龍先生遺事
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りょうけん
7
<勝> 先に読んだ夢枕獏の『白鯨 Moby Dick』に,この本について書いてあった事をきっかけにして読んだ。著者の勝小吉とは,かの勝海舟の実父である。小吉がこれを書いたのは江戸時代後半の1840年前後,年号で云うと文政から天保にかけての頃(良くは知らぬが)だと思われる。つまりおおよそ200年も前の書なのである。(”夢酔”とは小吉のペンネームのようなモノである。まあいわゆる筆名でござるな。あ,いっしょかw) 2021/08/09
イカクジラ
2
『独言』だけ読みました。夢酔こと勝小吉については安吾の『青春論』で知りました(歌舞伎の演目も見たがそっちは寝てしまった)。とにかく絵にかいたような破天荒。面倒見はいいし、腕っぷしは強いし、それでいて麟太郎は可愛がるし、まあ規格外の不良ですが、大人物です。悟り澄ましたところがなく、ただあった事を書いてるんで(それもカネの話ばっか)、天然なんでしょう。やたら読みづらい文章ですが、この親父の凄さは伝わると思います。2011/03/10
ヒコ。
2
幕末の伝法な御家人のこんな風になっちゃいけないよ日記。見所は三つ、一つは当時の口語で書かれた文章で、江戸っ子の言葉を読むことができる。二つ目は当時の世間の雰囲気が分かる。小吉が旅先で有り金を盗られても、どうにかこうにか生きて旅を続けられるのは当時の人情の暖かさとお節介さのおかげなのだろう。三つ目は小吉の伝法っぷり、こじきになる、金を盗む、大勢を相手に少数でケンカをする、すぐ刀を抜く、野宿して睾丸をなくす、刀の目利きで生計を立てる。とにかくフリーダム。海舟語録である氷川清話もおすすめ2010/12/11
いちはじめ
2
勝海舟の父親の書いた自伝(?)。子母沢寛「勝海舟」や「親子鷹」、坂口安吾のエッセイなどで勝小吉に興味があったので、平凡社ライブラリーで刊行されたのはとても嬉しかった。平山行蔵について書いた「平子龍先生遺事」も収録。どちらもなかなか面白かった2000/03/17
tkm66
1
〈幕末の江戸っ子の口語体〉がこんな具合に残っているとは・・傑作。2001/09/30