内容説明
朝起きて奥さんと碁を打ち昼寝して絵を描いて寝る―。こんな日課がもう何十年も続く。その絵が「天狗の落とし礼」と呼ばれた超俗の画家から紡ぎ出された思い出の数々。やわらかさのなかに鋭く光る、物の核心を見つめる確かな眼差し。
目次
生いたち
絵を志す
美校時代
樺太から郷里へ
二科会時代・戦後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
85
熊谷守一つけち記念館で見た実際の絵は、画集で見たのっぺらな色の集まりではなく、油絵の刷毛の跡が生々しい色彩の祭典であった。この本はご本人が91歳の時に語った自らの半生。日本経済新聞社に昭和46年6月から1か月連載されたものの書籍化。2000年初版。晩年は、豊島区の自宅から約30年間出ることはなかった。とてもストイックな生き方。ただご本人の語り口はあくまで自然。色紙を頼まれると「無一物」「独楽」「人生無根蔕」「五風十雨」など書いたという。「自分を生かす自然な絵をかけばいい」という考え。しかし解説で谷川徹三⇒2020/08/23
はっせー
47
本書は表紙にも描かれているような絵を書く画家の熊谷さんのエッセイになる。周りの環境などが複雑な分本人はマイペースなのかなって感じた😂熊谷さんの物事の感じ方が面白い!例えば川で溺れたときの感想が「こんなに忙しいのは生まれて初めてだ」だった。そんな捉え方するの!?って率直に思った😂また絵の捉え方も面白い「一般的に、ことばというものを正確に伝えることはできません。絵なら一本の線でも一つの色でも、描いてしまえばそれで決まってしまいます。」熊谷さんのエッセイを読めて良かった😊多くの気付きを得ることができた!2025/04/18
booklight
43
昭和46年の日経新聞「私の履歴書」から。いやぁ、絵だけを見ていると、苦心惨憺の上、70歳を過ぎてから自分のスタイルを見つけた成功した画家、と思っていたらそうでもなかった。ただ、自分なりの人生を生きていたらそうなった、という感じ。しかし過酷。裕福な家で育つが、途中から妾の家で育つ。結婚してからは息子を病で亡くし、実の母からよろしく頼まれた甥っ子も亡くしてしまう。描けと言われても、描けないときは描けない。子供の生死がかかっても描けない。そういう「自分なり」であり「へたも絵のうち」だと、なぜか心打たれる。2023/07/17
chiaki
30
日経新聞に「私の履歴書」として連載されたもの。解説者と同じく画集『ひとりたのしむ』から熊谷守一氏をもっと知りたくなってこちらを手にしました。画家でありながらも、絵を描くことを"生業とする"という体に、どこかアホらしさを感じてるような、こだわりない自由さや飾らない生き方に、彼のダンディズムをびしびし感じました!人と比べ、押し退けて前に出ることを嫌い、不満はあっても戦わず逆らわず…。せっかちで不満たらたら、いつでもファイティングモードな私にはない余裕さに憧れます。石ころ一つとでも十分暮らせるって。カッコいい…2024/09/12
Thinking_sketch_book
19
★★★★☆ 独特な視点で行きていて、社会の波にものまれずに独自の世界を好んで行きている気がする。こんな風に生きたいなぁ2018/03/11