内容説明
怪を志す“志怪”というジャンルが流行した中国六朝時代は、幻術の名人、墓から生き返る娘、冥界との交流、千年を生きる狐の変化、といった怪異の数々が饒舌に語られた。東晋の歴史家千宝が記した本書は、六朝志怪の代表作であり、中国小説の祖といわれる。
目次
神農
雨神
寧封子
ふしぎな松の実
彭祖
師門
木彫りの羊
王子喬
冠先
琴高〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
71
張六郎さんの漫画『千年狐』の原案。日本は人は死ねば、幽霊となるのに中国は生き返る事が多い。矢鱈、悪業とその影響が話を通して描かれる王莽などに権力が一人物に集中する危険性を後世に伝えんとする作者の気概を感じました。「人間に恋した馬」や「竜の子供」などの話は日本の「おしら様」や『夜叉ヶ池』を彷彿とさせる。そして『千年狐』で一番、衝撃を受けた雷神様の描写が原案に忠実だった事に込み上げる笑いの震えが止まりません。そして「火星の少年」で『封神演義』から『三体』までに繋がるSFの土壌はこの時代から生まれたのかなと思う2023/05/14
神太郎
31
短くコンパクトな怪奇話がずらっとならぶ。全文を訳すというのにはなかなか出会わないのでこれは有難い。勿論、読むのにはそれなりに苦労するが。八百万的な考えもあったり、陰陽五行などの思想や易の考えも入り交じり、思想、物語等の原型をぶちこんでみた感もありなかなかに混沌として荒唐無稽ながらついつい日本の民話などとの類似点や展開に目がいってしまい読み進めてしまった。この時代に火星からきたとされる人の話もありますが、イマジネーション凄い。古代の人の自然と人間社会の関係性も感じられ、興味深く読ませてもらった。2020/04/20
かんやん
30
六朝時代の志怪小説、1話数行から二、三ページで全464話、意地で読み切った。仙人、凶兆、予言、妖怪、幽霊、異類婚姻譚、動物の恩返しなどの怪異を記す。日本神話・民話と同根らしいものもある。昔から人はこの手の話が好きだね。ストーリーテリングの技術は進歩したけど、元にある志向はちっとも変わってやしない。古拙の味わいがあるやもしれぬが、やはり細部が活きてこないと、自分には神話や民話は退屈だ。木を切ったら、中から人面犬(顔は人に似て、体は犬)が出てきて、煮て食ったら犬の味がしたという話は、シュール過ぎてウケた。2022/11/06
更紗蝦
17
中国六朝時代の奇怪な話を集めた本です。怪談やフェアリーテイル風の話が多いですが、ちょっとしたファッションの流行を悪政の予兆とみなしている話なんていうのもあり、いろんな意味で荒唐無稽で面白いです。三国志の登場人物の名前が頻繁に出てくる(特によく出てくるのは孫権)ので、三国志が読みたくなります。2015/10/19
佐倉
14
350の馬と娘の婚姻と反故をきっかけに蚕が産まれる話、354の羽衣説話、83の川に捨てた積荷が供物として扱われる、421に見える人を化かす怪異としての狐…馬娘婚姻譚や羽衣伝説、竜宮説話といった日本の民話のプロトタイプのようなエピソードが多くありとても興味深い。4世紀頃の東アジアの民話・民間信仰の在り方が垣間見えるような一冊だった。かと思えば150のようなファフロッキーズとしか思えないような話、151では憂い眉や泣き化粧、虫歯笑いといった当時の婦人たちの流行といった話を天下の大勢と結びつけて語っている話も。2025/05/20