内容説明
ゴシックの夜に跳梁する異形異類、繁茂する動物文・植物文。古代と東方の珍奇なイメージ群のダイナミックな運動を無類の学識と才筆をもって跡づけた綺想の図像学。図版多数、2分冊。全面改訳決定版。
目次
第1章 ゴシックのグリロス
第2章 印章と古銭の奇想
第3章 イスラームのオーナメントと装飾枠
第4章 幻想的アラベスク
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
10
美術史では12-15世紀をGothicと呼ぶ。ラテン語圏のキリスト教文化の中に遊牧民ゴート人があちこちに残した異教的雰囲気を指すこの言葉を、著者はキリスト教以前の古代の記憶と東方の文化との相互浸透的な交流の痕跡として用いる。これら痕跡を著者は文字にではなく、絵画、印章や古銭、装飾品に表れる、頭から足の生えた頭足人(グリロス)、獣を孕む貝、アラビアの複雑なアラベスク等の過剰な混淆に見出す。本書は、ゴシックの様々な装飾芸術を一旦解体して流動化し、その織りなすパターンと諸バージョンの網の目として世界を提示する。2019/06/08
misui
5
再読。ゴシック中世のイメージへの異国の影響を論じている。上巻はヘレニズム的古代とイスラーム。玉石彫刻や印章や古銭、布地や写本から、頭足人、無頭・多頭の怪物、貝殻の中の獣、植物から生まれる動物などが、いかにして西洋に導入されたか。研究目的でないなら図鑑のように楽しまれるとよいかと思います。2019/07/06
Mark.jr
3
副題にあるようにゴシック美術の装飾の図像学本なわけですが、扱われている大半が空想上の動物・生き物なので中世ヨーロッパ妖怪本としても読み応えのある一冊になっています。2023/02/06