内容説明
山を見つめ、自分の心を見つめながら、雪と岩との非情の世界に命をかけた青春の日々―。昭和初期のアルプスの山々を舞台に描く、山岳文学不朽の名著。
目次
たった一人の山
頂上へ
マッターホルンの麓
ドロミテの山旅
登山三昧
岩登りの味
山と氷斧
山靴
情熱
雪〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さきん
16
1920年代から活躍していた登山家のエッセイで第一次世界大戦の生々しい傷跡が伝わってきた。また、前人未到のアルプスのコースを、こんな昔の日本人が開拓していたことに驚いた。装備についても詳しく、氷壁と岩壁の登攀技術の違いについての解説が面白かった。2017/03/10
yamakujira
2
文春文庫版(1977年発行・220ページ)で読了。ウェッターホルン西山稜の初登を成し遂げた著者の紀行とエッセイ。ヨーロッパアルプスの話が中心だから、あまり興味のない分野なのに、戦前に海外で活躍する登山家の熱意に打たれるな。でも、山を征服する、山と闘うって姿勢は好きじゃない。登山家ってそういうものなのか。イタリアのファシズムを嫌悪する文章があるけれど、自分の母国が同じ道を進んでいるとは思わなかったんだろうな。 (★★★☆☆)2014/08/16
Kotoko Sato
1
第二次大戦直前にスイスにてアルプスをひたすら制覇していた 日本人がいたことに驚き、そしてその当時に書かれたとは思えない程 瑞々しい、鮮度が高い文章にさらに驚いた。 アルプスの山々での話を始め、帰国後は、穂高や富士山に登頂した話まで 20編ほどの小編から溢れるのは、山と真剣に向かい合い、 愛情を持って接する筆者の純粋さ。特に、ウェッターホルン西山稜 初登頂を成し遂げた時のことが 記されている「頂上へ」が手に汗握る。 そして、最後「山のあぶなさ」では筆者独自の視点から自然の怖さが 論じられ、非常に興味深い。2013/05/25
アルクシ・ガイ
0
山登りというのは本来、夏のスポーツだったのだとあらためてわかる。冬山に登って遭難する人を「自然のキョーイを甘く見て」なんて批判するつもりはさらさらないが(ベテラン山岳ガイドだって遭難する時はするのだから)、このことは頭に入れておいても損はないだろう。2013/01/16
はる
0
題は「たった一人の山」だけど、アルプスの友人たちとの交流がじわじわと伝わってくる。 命懸けの山歩き、岩稜登攀のなかに深い情緒と軽快な心意気を感じさせられました。2019/07/30