内容説明
ウィーン世紀末に、変貌する都市を彩ったクリムトの装飾美と対照的に、孤独な魂の内面とエロスへの憧憬を極限まで赤裸裸に描き切ったシーレの生涯と作品を共感を込めて追い求めた著者渾身の美術論。
目次
夢みる少年
魂の形成
画家となる
師と弟子
叛逆
ウァリー
原型としての母
二重の自画像
美術史のなかのシーレ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tome
1
エゴンシーレ展をきっかけに読んだ。一気に読んだ。筆者の文体はシーレを切実に描こうとし、読者をシーレの内的世界へと引き摺りこむ。シーレの絵を鑑賞し、この評伝を読むと、シーレはウァリーとの関係の中で、鋭角な線によって、現実存在として生きる人間を尖鋭的な感覚で描こうとしたことがわかる。そして、それはエゴン・シーレという自我を探り続けたことにより、エロス、性衝動といったむき出しの生の断片を描き続けた画家こそがエゴン・シーレなのだ。だからこそ、じっくり味わうというよりは、一気に読んでほしい美術評論である。2023/04/08
sanukinoasayan
1
日本においてそれほどポプュラーではない?エゴン・シーレ、グスタフ・クリムトの手厚い援助を受け、オーストリア分離派等に属し作品を描いていた画家ですが、その画風は人間を、女性を、また過剰なほど自画像を生々しく、力強い、あくの強い?筆跡で描いており、観たものに強烈な印象を残さずにはおかないもので、影響を受けたであろうクリムトの華麗な作風とは似ていなくはないが、より内省的で自己愛の苦悩に満ちたもののように思います。素人の勝手な印象?推測?ですが大友克洋の作画にその影響が見られるように思うのは穿ち過ぎでしょうか?2022/02/23