内容説明
「知識人とは亡命者にして周辺的存在であり、またアマチュアであり、さらには権力に対して真実を語ろうとする言葉の使い手である。」著者独自の知識人論を縦横に語った講演。
目次
第1章 知識人の表象
第2章 国家と伝統から離れて
第3章 知的亡命―故国喪失者と周辺的存在
第4章 専門家とアマチュア
第5章 権力に対して真実を語る
第6章 いつも失敗する神々
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
57
知識人という言葉に最初違和感があったが、30年前BBCの番組で講演したサイードの言葉は、高みから見下ろすという感じからかけ離れていて熱い。“なまなましさと緊迫感”に満ちている。それも一本調子でない。“言葉を使って介入すべき頃あい”といった表現もある。またパレスチナ系であっても身贔屓するような論も見えない。“不当な侵略行為を非難する”のは敵に対してだけでなく自国に対しても声を上げるべきと説く。体制に阿ねたり“荒唐無稽な虚構を捏造”する知識人を辛辣に非難する一方、ナイポールやアドルノ、チョムスキー等を讃える。2024/11/15
ころこ
37
彼のパレスチナという出自はかなり珍しいのではないでしょうか。自らの境遇を故郷は実際に遠くにあるのではなく、日常的に故国を思われるものに囲まれて満たされない思いがついてまわると、追放亡命の身の者が位置付けられるのは中間状況であると表現しています。ここから知識人は定義されます。知識人といえば、超越的な専門性や精神性とそれらに裏付けられた権威が思い浮かびます。ところが、専門性は社会の有用性から国家への忠誠の圧力を受け、意見を統一させて懐疑を棚上げするよう求められます。著者のいう知識人は、集団思考から一歩退いた反2018/11/28
踊る猫
36
論旨に確かな見晴らしのよさを感じる。だが、それは「わかりやすい」ことを必ずしも意味しない(少なくとも私にとっては)。知識人について専門知識を有する存在ではなくその知性をバネにフットワーク軽く動き、体制や硬直したマジョリティに楯突く存在をこそそう呼ぶのだと整理する。これは「使える」本だと思う。私自身がまさにサイードの整理における(もちろんこんな言葉を彼は使わないが)「専門バカ」になっていないか、見つめ直すためにも。いくつか些末な次元での異論はあるが、その疑問はこの私が自らの内に引き込んで考え続けるべきものか2023/06/04
cockroach's garten
26
サイードの知識人論。体制におもねるばかりの”エセ知識人”は本当の知識人ではなく、アウトサイダーながら自分の主義を貫く意志の強い人が知識人であると語る。そして同じく迫害される者の味方であると。全体的にサイードの主張には同意できたものの、一つ腑に落ちないところがあって、彼が亡命者ならば誰でも知識人であるかのような書き方は疑問に思った。2020/06/15
はっせー
26
知識人はアマチュアであり、そして批判精神を維持するのが大事だとわかりました!しかし文章が難しく全部理解することが出来なかった。だからまた知識をつけて読みたいです!2018/11/22
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