感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
41
残酷とは民棄つることなり/寄り添わずして/忘却を装う心の冷たさよ/ 静かな怒りを湛えた書物だ。 第一章『過渡期の混乱』、「うばわれた山林」では、木曾谷の人々の困窮の様子が語られ、島崎藤村「夜明け前」を読む上で参考になった。 第二章『ほろびゆくもの』、「流亡の村」では、「三陸大津波」や「十津川くずれ」にもふれられている。 「山海記」の中でこれらの災害にふれていた佐伯一麦は、この本を読んでいたのだろうか?2019/04/25
きいち
30
保障なき社会とはよく言ったもの、それまでなけなしの生活保障を担ってきたムラや武家の共同体が壊れ、代わるものを用意する気など全くない自由主義経済の世が訪れる。新興の不在地主と資本家に富は集積し、一般人は災害が来れば終わり、格差は極大化する。結局「戦時経済」だけが止めることができたわけだ。◇その文脈での、アイヌの人びとへの暴虐の歴史、耐えながら読んだ。アフリカやアメリカでのヨーロッパのならず者たちによる植民地化そのもの、日本人なら知らねばならぬ最低最悪の事績。◇松浦武四郎らの行動と記録が救い、それも欧州同様。2015/09/23
ndj.
14
御一新のあとさき。民衆の生活は自由度をうしなって苦しくなっただけなのでは?自己責任、の先駆けか。鉄道の敷設によってさびれた村、災害に見舞われて打ち捨てられる村、開拓の失敗、アイヌ問題、そして他国への移民などを扱う。血税、を文字通り、血を絞られることだと勘違いしたという逸話がことの核心を突きすぎていて笑うに笑えない。2018/03/30
CTC
12
全5巻の4。前巻読了から4ヶ月を経てのシリーズ通読再開。タイトル通り読み進めるのが辛い、重苦しい内容な訳だが…正直に言って、この4ヶ月間に読んだ社会的にまずまず評価されているノンフィクションなどと較べて、単純に読み物として圧倒的に優れている。テーマ、アプローチ、濃度、構成…書き手も複数だし、一見取り留めない順序で読まされているようなのだが…ひとつひとつの話が主題に対して価値を発揮している。終盤に“百姓市五郎の家”という話がある。宮本常一が自身の曾祖父〜父の3代を書いたものだ。面白くないわけがない。2021/10/31
たまうさ
4
明治時代は坂の上の雲を目指す人々がいた一方で、没落,滅亡、流浪する人々たくさんいたということが解った。2014/12/06