内容説明
大地のように古く、森の木の切り口のように新鮮な、独特なことばの響き―。〈ロマンセ〉という抒情風物語詩の様式を用い、ジプシーの生活を主題とした、史上、もっともスペインの民衆の心をとらえたといわれる詩集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
105
鮮やかなイメージに満ちた本当に美しい詩集。詩の意味は分かりにくいが、読んでいると意味のことは気にならなくなり、詩の世界にあっという間に引き込まれてしまう。作者によると、ロルカはスペインに昔から伝わるロマンセと呼ばれる抒情風物語詩の形式を使って、これを書いたそうだ。神話や伝説、昔話といったものは言葉の壁を超える面がある。人の無意識に訴えかけるのだ。だから、ロルカも古風な形式を使ってこれを書いたのだろう。生と死の狭間を縫うようにして鮮烈に表現されるロルカの詩は、彼の短い人生を反映しているような気がした。2017/05/11
マリカ
29
ページを開くと、フォルクローレが聞こえる、そんな素晴らしい詩集です。訳者のおっしゃる通り、翻訳では原詩の美しい音とリズムは伝わりません。しかし、詩に描かれた情景を思い描くと、私の耳には、アンダルシアのジプシーが弦楽器の伴奏に合わせて、ロルカの詩を、フォルクローレを歌っているのが聞こえるような気がしました。ロルカの詩の魅力はそういうところにあるのだと思いました。2012/03/18
Roy
21
★★★★+ 言葉がとても美しいのだけれど、美しい言葉にはつきものの繊細さとか儚さとか微塵も感じられなく、力強くて陽気でちょっぴりいやらしいジプシー達の「死」というよりも「生」に対する躍動感がすごく良かった。解説で音読みを勧められ、それであれば原文も載っければいいじゃんお前は馬鹿かとムカっときたのだが、載っけられても原文のスペイン語意味云々の前に読めませんでした。でも素敵です。2009/04/03
ロビン
19
38歳の若さで銃殺されたスペインの伝説的な詩人ガルシア・ロルカの第三詩集で、「天空の無数の舌を一杯にはらんだ・・」「一本の月の氷柱が・・」「三千の夜の若者は・・」「黒い火薬のバラが・・」など、独特で美しいイメージで紡がれるロマンセの数々が花開く神秘の丘である。スペイン文化の知識がないと難解に感じるが、肉感的で幻想的な世界観の一分は味わえる。また解説にもある通り翻訳では音律を味わえないのがやはりもどかしい。巻末に「夢遊病者のロマンセ」のスペイン語原詩が収録されているのが翻訳者の思いを代弁してもいようか。2020/06/10
かふ
17
ETV特集「ブラック・ライヴズ・マターの衝撃」を見たあとで、フェデリコ ・ガルシーア・ロルカ『ジプシー歌集』を読んでいたら今の黒人の状況とロルカがうたったジプシーの状況をシンクロさせて読んでいた。訳した会田由の主張によると音韻的な美しさが日本語では伝わらないということだが、歌としてはそうかもしれないが詩としては意味が伝わってくるのは、あまりにもロルカが歌ったジプシーの苦難は今のアメリカの黒人の状況と似ているような。これはロルカのBLM、「ジプシー・ライブズ・マター」だ!2020/08/28