出版社内容情報
マルティンとフリッツの兄弟関係を軸にした小評伝。高名な哲学者と故郷の朴訥な庶民という対比から、ハイデッガー哲学の本質へ導く。
内容説明
もうひとりのハイデッガー。マルティンの哲学を理解しようと思う者は、在郷の弟フリッツのことを知るべきである。「存在の哲学」への驚くべき手引。
目次
小さな町
両親
教区
鐘撞き
先祖
フリッツ
道化
教師
一九三四年のカーニヴァル
一九三三年の革命〔ほか〕
著者等紹介
ツィンマーマン,ハンス・ディーター[ツィンマーマン,ハンスディーター] [Zimmermann,Hans Dieter]
1940年生まれ。ベルリン工科大学で学位を取得したのち、放送局、新聞社などでジャーナリストとして働く。1969‐75年にベルリン芸術アカデミー文学部門事務局勤務ののち、ハノーファー大学で教職に就くかたわら、教授資格を取得。1975‐87年はフランクフルト大学、1987‐2008年はベルリン工科大学で、教授として近代ドイツ文学を講じる。2000年にチェコ共和国大統領より、トマーシュ・ガリグ・マサリック勲章を授与されている
平野嘉彦[ヒラノヨシヒコ]
1944年生まれ。東京大学名誉教授。ドイツ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅん
14
哲学者ハイデッガーには弟がいた。彼、フリッツは地元では名の知れたカーニヴァルの口上役であり、高い知性と道化的意匠を誇る男だった。兄弟の評伝かと思いきや弟が直接出てこないアレントの話や兄の山荘生活の話などを含む断章形式の本で、断片を繋ぎほぐす役割は読者に任されている。正直物足りないと感じもしたが、強い信頼関係を保ちつつ異なる思想を有する兄弟の有り様に感銘を受けたし、この本の中途半端な様式自体がハイデッガーの思想の持つある種の偏狭さへのアンチテーゼになったいるようにも思う。フリッツの書いたもの読んでみたい。2018/02/04