内容説明
ヨーロッパ的「普遍」に抗し続ける熱く黒い叫び―反植民値主義の古典的テクストがいま再び甦る。A・ブルトンの序文、詳註、長文訳者解題を付す初の完訳決定版。
目次
帰郷ノート
植民地主義論
エメ・セゼール小論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
17
エメ・セゼールは1913年西インド諸島のフランス領マルティニック島に生まれ、学業優秀のためパリに渡り高等師範学校に学んだが、民族性に目覚め「ネグリチュード(黒人性)」を唱えて詩や戯曲で黒人の文化的・政治的復権を訴え、のちに政治家となった人である。本書にはシュールレアリスムに影響を受けつつネグリチュードに至る思想的過程を描いた、力強く、奔放と言ってもいいほど豊かなイメージの流露した詩「帰郷ノート」、白人による支配体制の欺瞞や数々の人権蹂躙を批判した「植民地主義論」、訳者による「エメ・セゼール小論」を収録。2020/08/26
Rion
1
ゼミ内で植民地主義批判を行った人として紹介されていたため、読了。帰郷ノートのほうは自分の感受性が低いためか、感動まではいかなかったものの、詩の後半では解放に満ち溢れているように思えた。植民地主義論は、植民地関係をよく捉えており、近代化やキリスト教化の傲慢さを突いている。「植民地化とは物化である」という一言が印象的だった。植民地の形式は現代では現れなくなっているが「物化」自体はどんどん進んでいるように思える。ゆっくり考えながらまた読み返したいと思った。2015/12/08