内容説明
大量消費社会における「表象」を徹底的に批判し、新しい現実の構築、トータルな生の実現を求めてやまぬ、幻の政治、文化運動の全貌が初めて明らかになる。シチュアシオニスムとは何か。不撓のモダニスト、不屈のアヴァンギャルディスト。ドゥボールの思考に、やっと時代が追いついた。同運動の歴史を詳説する力作訳者解題を付載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
恋愛爆弾
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参政党なるどこの馬の骨かもわからない陰謀論政党がありもしない「日本」を振りかざし排外主義と差別主義を煽って跳梁するという事態に陥ったとき、あるいは2023年に大江健三郎が亡くなった際の世間の若い「クリエイター」たちがその前年の安倍晋三の死への愚劣な追悼や悲嘆と比して何ら無反応だったとき、それら「疑似円環的な時間」の愚劣な繰り返しのたびに、「文化のなかで歴史を忘れさせる働きをするスペクタクル」について断片なのに眠気を誘う小難しい文章で徹底して語り、現代を網羅しようとしたこの本のことを思い出すだろう。2025/07/09
いたま
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20世紀中頃にフランスで活躍したシチュアショニストであるドゥボールの情報化する後期資本主義社会を分析した著作。といっても、アフォリズムの集成であり、一貫した体系的理論が述べられているわけではなく(というのも体制的な全体主義を避けるたけだという)、何をそこから見出すかは読者に委ねられている。具体的な生産の過程から切り離されたモノの記号的側面が圧倒的となった現代の社会を「スペクタクルの社会」と定義して分析し如何に反抗するのかを模索している。マルクス主義的な政治理論の話が強い部分は少し辟易する。2021/06/11