出版社内容情報
三島由紀夫、開高健、手塚治虫、池波正太郎、植草甚一、植田正治、向田邦子など31人の作家が日頃食したお菓子やフルーツを紹介。甘さ、辛さのなかに作家の隠された素顔が現れる。
内容説明
三島由紀夫から森茉莉まで、美味しい、おやつのアルバム。
目次
三島由紀夫―作家は食をあれこれ語るべからず
手塚治虫―「チョコレートがないと僕は描けません」
開高健―饅頭もたこ焼きも、わしは研究しつくすデ!
檀一雄―「杏仁の匂いなつかしい」と作って食べた杏仁豆腐
植田正治―「なんかないか、なんか甘いものないか」
瀧口修造―お菓子なのか、オブジェなのか?
市川崑―せんべいはちょこっとつまめるあられにかぎる
沢村貞子―おひるは、おやつていどでいい
坂口安吾―ヒロポンとアドルムとあんこ巻き
久世光彦―母が選んだ、うっすらミルクの匂いがするおやつ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
142
文豪、鬼才、名文家……明治・大正・昭和を生きた作家が好んだ『おやつ』を紹介した本。甘いお菓子が似合わない三島由紀夫は、執筆の合間に煎餅を摘んだ。「太く短く」を貫いた彼が愛飲したのが「延命茶」だったのはご愛嬌。チョコがないと描けなかった手塚治虫、クッキーの缶を傍らに机に向かった川端康成。冒険の旅に出る時、榮太樓のみつ豆を携えた開高健……。『おやつ』には、命を削って創作に挑んだ作家がふとみせる無防備な表情を想像させる。その点、向田邦子や石井桃子、茨木のり子など女性作家は隙がない。『らしいおやつ』という感じだ。2016/08/27
しいたけ
106
おやつの向こうに作家の執筆姿が透けて見える。ほっとし口にする甘さ、夢中で頬張る瑞々しさ、家人の暖かな心遣い。その後ろに写る作家の部屋に、只々うっとりする。陰の主役になっている。父の書斎の居心地良さを思い出す。父が食べさせてくれた子どもには贅沢な菓子の甘みも。昭和の香りに包まれ心が柔らかくなるのは、死んだ父に触れた気になれるから。2017/04/29
seacalf
91
これは思いもつかなかったアプローチ。おやつが題材なだけに、文豪の方々のほっこりするようなエピソードが多い。並々ならぬこだわりに焦点を当てているのではなく、作家の意外な素顔を垣間見るという風体なので気軽に読めて楽しい。おやつだけでなく、書斎や本人達の写真も満載で、今とは違う時代の流れにも触れられ、1冊で色々な楽しみを味わえる。たくさん気になるお菓子が紹介されているが、浅草のアンヂェラスや染太郎、銀座の空也は行ける距離なのが嬉しい。お出かけの新しい口実が出来て楽しみだ。2017/04/27
こばまり
67
なんと楽しい一冊だろう。おやつと人物の組み合わせが絶妙で、隅々までむさぼるように読んでしまった。時折紹介される書斎の写真がこれまた素晴らしい。表紙は時代物ファンの読友様ご名答、池波正太郎氏のおやつである。2016/12/25
夜長月🌙@読書会10周年
63
31名の作家の好きなおやつが写真入りで掲載されています。関連ある小説からの一文紹介やそのお菓子屋リストなど充実した内容です。手塚治虫氏は明治のミルクチョコレート好きでファンは命日に墓前に供えるとか。他に「わかば」のたい焼きや竹むらも出てきます。一番インパクトのあったのは坂口安吾の覚醒剤(ヒロポン)。2024/11/08