出版社内容情報
幕末・明治にかけて漆喰彫刻と鏝絵の名人といわれた「伊豆の長八」。画業の全貌を額絵・塑像・掛け軸などの代表作約100点で辿る。
内容説明
仏さまも美女も龍も富士山も、全部、鏝と漆喰で制作った奇才。いま、評価が高まるその作品と生涯を解明する。
目次
塗額―鑑賞作品として、額縁を付けて制作された鏝絵
塑像―仏像、神像・肖像から神使の動物まで精緻を極めた超絶技巧
建築装飾―さまざまな画題に挑戦し、鏝絵の技法がさえわたる長八ワールド
ランプ掛け―鏝絵の技が迫真的な龍や鷹、豊穣な植物をインテリアに表現した
掛軸―画家としての力量を示す見事な形態描写と卓抜な色彩感覚
特殊作品―屏風、衝立から花瓶、印篭にも刻まれた長八の技
著者等紹介
日比野秀男[ヒビノヒデオ]
常葉大学名誉教授・掛川市ステンドグラス美術館館長。1947年、静岡県生まれ。慶応義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。博士(美学)。静岡県教育委員会、静岡県立美術館、常葉美術館館長、常葉学園大学造形学部長を経て、現在に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nizimasu
3
鏝絵というなかば職人のような存在であった伊豆の長八もようやく美術的な評価が高まっているということらしい。手に取るきっかけも吉祥寺での展覧会でした。それにしても江戸末期から明治にかけて社会が激変する中で小林清親しかり伊豆の長八も様々な生活様式の変化に追従しつつ美術のありようを模索していてその多彩な作品群には目を奪われる。表紙のような荘厳な龍もあれば好んで描いたおかめのような素朴の系譜に連なるものもある。器用さと職人ゆえに芸術家としてのアピールがなかったことが再評価が遅れた原因らしいが奥ゆかしさも日本らしい2015/10/08
Witch丁稚
2
実物を見てすばらしさに感動して読んでみたが写真になると魅力が半減する。となると絵のように持ち出せない鏝絵は海外に評価されるのは難しいが芸術としてはひけをとらないレベルではないか。立体によるダイナミズムと繊細さ。仕事が早かったところも良い。線に迷いがない。そしてこの作品たちをLEDや蛍光灯でなくランプや蝋燭の光で見たらどうなるのか想像するだけで楽しい。2017/12/04
林克也
1
長八という人は左官の”神様”だという認識しかなかったが、この本を読んで、実は知性と教養の深い人なんだと思った。もし文章を書くならどんな文章を書くのだろうか。読んでみたい。2015/12/27