内容説明
火薬と技術と戦術。14世紀はじめに西欧に登場した火器が、戦争の様相を一変させる決定的な兵器としての地位を確保するまでには300年近い歳月を要した。銃砲が戦場の主役となるために克服しなければならなかった戦略・戦術、軍事組織、そして技術上の課題を克明に解き明かす。
目次
第1章 中世後期における火器以外の兵器と戦術
第2章 火薬の第一世紀―1325年ころ~1425年ころ
第3章 十五世紀における黒色火薬
第4章 戦争の中の火器(1)―十五世紀
第5章 滑腔銃砲の弾道学
第6章 戦争の中の火器(2)―十六世紀
第7章 技術と軍事革命
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴィクトリー
2
アジアと異なり、硝酸カリウムの含有量の少ない硝石しか産出出来なかったヨーロッパは、その湿気への弱さから、ペースト状に溶かしてから大きな固まりにして保存し、砕いて使用する事を覚えた。それが火薬の粒化を生み出し、後の火薬の威力の増大を導いた、と言うのは初めて知った。施旋されていない球状弾の命中率の低さもだが、本書で科学的に説明されていることは非常に面白く読めた。 が、最後の方の「軍事革命」に関する辺りの記述はそれまでのところと異なり明快さを欠くようで、印象に残らなかった。2012/01/05
in medio tutissimus ibis.
1
火器の普及以前から普及し主役となるまでの欧州の戦術の変遷を追う。後世からは世を席巻したのだからその優位性は明らかと思いきや、硝石の値段や他の兵科との連携、戦士階級の価値、兵馬の慣れ、野戦より籠城が優位になっていくなど様々な要因でその普及には一進一退がかかり、また火器自身がその要因ともなるから一筋縄ではいかない。大砲用の爆発力を抑えた火薬のように、性能は高ければいいわけではなく、その時々や用途によって適切なものが求められる。火器そのものは無論、15~17世紀西欧の戦争文化への理解を助ける良書。少々読みにくい2024/09/16
May
1
終身身分保障を得るための論文として書かれた学術書のため、様々な事柄が「知っていて当然」とばかりに何の説明もなく記述されているし、参考図書として挙げられている資料は、ほぼ全て日本語訳がない。とはいえ、このようなことは本書の魅力をいささかも減じるものではない。14~16世紀前半の戦いに興味があるのなら絶対に読むべき本である。本書の良さは、単に技術論に終始することがなく、技術の進歩の要因として政治、社会、宗教など外的なものの影響を重視していることにある。おすすめである。02年5月読了2016/08/22
ゴジラ 芹沢
1
やっと前から探していた、ヨーロッパで騎兵や砲兵、銃兵がどのように活躍してかという部分の答えとなる資料に出会えた。2015/11/28
Tのひと
1
火器以前の戦闘にも分量が大量に書かれて農兵の密集体系の利点と弱点がわかりやすく書かれている。 また下馬騎士がなぜ用いられたかなどもわかり火器以前の戦闘の資料としても有用。