内容説明
現代人類学の創始者が綴った、心のフィールド・ノート。原住民に対する苛立ち、郷愁、絶望、幻想への逃避…。〈安楽椅子の人類学〉をのりこえ、フィールドで格闘するひとりの人間のドキュメントが、人類学の根底を問い直す。
目次
第1部 1914―15年
第2部 1917年―18年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
E・リーチは著者の記述について、トロブリアンド諸島のフィールドワークでは生き生きしているが、文化一般を語る人類学理論を提示す場合は凡庸だと批判した。構造人類学の先駆者の1人とされ、現地を歩き各要素の連携の仕方から機能的に社会を捉え、進化論を軸とする書斎の学だった既成の人類学を厳しく論駁した著者だが、死後編まれたフィールドワーク時の2年間の日記には、自らの中の既成の人類学にある観念や偏見に対する戦いや、調査対象の女性への性的欲望に対する葛藤が赤裸々に記される。その中で描かれる異文化の風景や月はとても美しい。2024/02/27
柳瀬敬二
3
言わずとも知れた「西太平洋の遠洋航海者」の著者。引退した政治家が出版を意図して書いた回想録のようなものとは違い、完全に個人的なまさしく日記。公開当初スキャンダルを呼んだ研究に関する裏話や、オーストラリアに残してきた愛する女性に対する個人崇拝に近い思慕など、一世紀前の生身の人間の姿を垣間見ることができる。2014/04/29