内容説明
「われこそは死んだと言われているピョートル3世なるぞ」帝国の屋台骨をゆるがせたプガチョフの〈うそ〉に、ロシア民衆の夢をさぐる反乱の社会史。
目次
1 良きツァーリ―貴族の陰謀
2 モスクワは涙を信じない
3 ピョートル3世の旗のもとに
4 皇帝の奴隷として仕えよ
5 デマの中のツァーリ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
筑紫の國造
11
帝政ロシアの女帝エカテリーナ時代にあって、コサックらを引き連れて反乱を起こしたプガチョフについて書かれた本。が、プガチョフの反乱そのものより、その背景にあった社会的状況や帝政ロシアに脈打つ「良きツァーリ幻想」への言及が多くを占める。いかめしい表装で、しかも題材が日本人にはあまり馴染みがないものではあるが、とてもよみやすくて面白い。著者初の単著らしいがこなれた文章で、門外漢でも気安く読み進められる。メジャーな著作ではないが、読んで損はない。惜しいのは、参考文献一覧がないことか。2018/04/16
印度 洋一郎
4
エカテリーナ女帝の御代に発生した「プガチョフの乱」について、反乱そのものよりも、偽ツァーリを担いで反乱に立ちあがった民衆の意識「救世主としてのツァーリを待望する心」を軸に読み説く。皇帝陛下は悪くないが、周りの貴族が悪い、という民衆の切ない心情が生み出した世直し思想や、デマに見え隠れする願望・欲望など、プガチョフと民衆との共犯関係とも言うべき、妄想共同体のような反乱の実態を活き活きと描いている。革命など望まず、良い皇帝陛下に全てを委ねたいという民衆の言動も興味深い。文体が講談調で読み易いのも良かった。2013/01/16
陽香
0
19871017
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