内容説明
密輸の横行、民衆の憎悪の的となった悪税吏、さまよう乞食の群れ―大革命前の揺れうごく社会を、ひとりの〈反逆者〉の姿を介して描く。
目次
1 誇り高き反逆者
2 財政国家と総徴税請負人
3 密輸の空間
4 マンドラン伝説の創造
5 民衆社会と周縁世界
6 主権国家と貧民
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaze
10
18世紀フランスで活躍した密輸団の頭領マンドランの伝説を検証しつつ、近世フランスの社会を考察している書。マンドラン伝説は初めて聞いた。「金持ちから奪い、貧しい者に分け与える義賊」といえばアルセーヌ・ルパンだけど、なるほど昔からフランスにはルパンが生まれるだけの下地はあったのだな。塩と煙草が主な密輸品で、そこには近世国家の財政と税制が大いに関わっている。密輸を生み出すメカニズムとしての社会構造(周縁の不安定さなど)について色々知れて良かった。18世紀ごろの仏文学を読む上で、貴重な背景知識を得た。2021/10/10
M
2
歴史小説よりも緻密さがあり、蘇ってくるようなリアルさを感じた。歴史資料を基に、近世フランス社会で伝説となった義賊マンドランを題材に、当時の社会の内実を浮き上がらす試みだ。内容としては現在では既に定説だが、近世フランス社会は「絶対」王政期などではなく、むしろ地方の貴族や名士と中央との権力闘争が巧みに繰り広げていた時期で、その二重の搾取に喘いでいた民衆は板挟みになっていたのである。フランス革命も現在では、民衆はそのような板挟みを忌避し、権力の一元化を求めたため生じ、近世と連続性のある事象と考えられている。2019/11/27
人生ゴルディアス
2
フランスにいた密輸団の頭領マンドランを扱った本……と思っていたけど、マンドラン自体は2割程度? 塩の密輸に関する分析は興味ある分野なので面白かった。青本の分析による、神格化の過程……は大袈裟かな……。最後のほうの貧民層の分析は全く面白くなかった。本のタイトルに即すなら、『中世のアウトサイダー』的なものにするべきだったのでは。2020/04/16
Cebecibaşı
0
一昔前に流行ったスタイルの社会史の研究手法、という感じで題材は非常に面白く、記述も非常に読みやすく物語としても面白い。研究としてはフランス語研究の成果をそのまま反映しているのみで独自性はどれほどあるのかいまいち不明である。今の時代に書いたら色々怒られそう。時代のなせる技である。2020/02/05
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