内容説明
斬新な中世像の出現。教皇や皇帝からアウトサイダー、架空の人物に至るまで、さまざまな人びとの織り成す中世世界を生き生きと描く。
目次
農民と市民(農業;地方自治体;不信;市場経済;自治都市;礼儀)
貴族と領主(戦争;支配権;美徳;平和;威厳;偉大さ)
聖職者と学者(司教;司祭;修道士;詩人;学者;生徒)
アウトサイダーと異国人(追放された人びと;異端;ユダヤ人;ビザンティン人;イスラム教徒;モンゴル人)
人間社会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
50
下巻は”人間”について見ていきます。共同体(村、同盟、都市等)の内と外で牽制し合う人々がいて、戦いに「制約された生活を賭け」る騎士がいて、詩人はそんな人間を発見し歌う。様々な生活を見て思うのは、いつの時代も人は人と暮らしているということ。人々は窮乏や利害から多様な共同体に属し、生きている。ただ、中世の生活形式は「もはやわれわれのものではない」と作者は言う。では現代は? 中世の人々と同様、私も時代の「意志」を意識したことはなかったけれど、彼らの言葉に耳を傾けながら自分の時代にも思いを馳せることになりました。2019/04/05
印度 洋一郎
4
下巻は、中世人そのものの意識を探る。農民、貴族、聖職者などが自分達をどう認識していたか、他の身分の者をどう思っていたか、当時の一次資料を読んでも、なかなかわかり難いのは、それだけ世界が変わってしまったということ。中世人は、今の人間にとってはエイリアンも同然だ。ヨーロッパ以外のアウトランダー達への意識が興味深い。後ウマイヤ朝のカリフと会って知的な人柄に好感を持つスペイン人の修道士、モンゲ・ハーン(フビライの兄)にキリスト教の偽善を指摘されて何とか言い逃れるフランス人聖職者など、頑迷な者ばかりではなかった。2013/02/15