出版社内容情報
源氏物語と足利将軍家に淵源を持つという華道流派「源氏流」。18世紀の江戸に出現して隆盛を誇った流派の軌跡のうちに、日本文化が源氏物語を受容した一つのあり方をみる。
内容説明
十八世紀後半、いけばなの歴史で初めて『源氏物語』を取り入れ一世を風靡した「源氏流いけばな」。二代で断絶し、十九世紀には廃絶したとする通説に反して、じつは、帰郷した子孫によって流派は存続し、秘伝も伝承されていた。その幻とされていた『源氏物語』との関係を詳らかにし、古人がこの物語を五感で堪能していた様を明らかにする。
目次
1 千葉龍卜―源氏流いけばなの創始者(現代における知名度;源氏流の由来 ほか)
2 源氏流いけばなの伝授―三段階伝授(源氏流いけばなの三段階伝授;第一段階 ほか)
3 大嶋宗丹―源氏流いけばなの大成者(大嶋宗丹の略歴;大嶋宗丹と『源氏物語』―真の巻 ほか)
4 円尾遊龍―源氏流いけばなの革新者(円尾家と徳大寺家;徳大寺家と華道 ほか)
5 家元騒動―源氏流いけばなのゆくえ(暁雲斎の家系;円尾家の悲劇 ほか)
著者等紹介
岩坪健[イワツボタケシ]
1957年、京都市生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、同志社大学文学部教授。専攻、『源氏物語』の享受史。著書に、『源氏物語の享受―注釈・梗概・絵画・華道』(和泉書院、2013年。第15回紫式部学術賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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山猫
11
「源氏香」のように花を楽しみ、一流派を打ち立てた人物伝でもなければ、その伝花54種を探るのでもない。花伝も池坊の伝書のパクリくさい。こりゃ、二代で絶えたと言われても仕方ないかもしれない。しかも、定型についてかくいけるべしと示すのが伝書というものだが、「こうでもいいし、こうでもいい」と自由すぎる。ならばわざわざ伝書にする必要もないし、指導する必要もないわけで、弟子が集まるわけがない。 失敗したビジネスモデルの一例として読むべきだったか?2019/12/31
禿頭王
0
源氏流生花の中心人物だった千葉龍卜、大嶋宗丹、丸尾遊龍の来歴を洗い直し、源氏流の家元騒動までの流れを追っています。開祖が亡くなると、高弟が後継者を名乗り、やがて末裔と称する人物が出てきて、最後は後継者がなく消滅というお決まりのパターン。伝書もアラが目立つようで、源氏流自体が時代の徒花だったのかも。2023/04/17