出版社内容情報
和歌はなぜ詠まれた後も言葉を変える?より深い詩情や配列の効果など、歌集編集時になされた変更の意図と具体相を俊成の営為に見る。
小山 順子[コヤマ ジュンコ]
著・文・その他
内容説明
俊成は和歌史の上に大きな足跡を残した歌人である。私たちは俊成のすぐれた和歌を、完成した動かしがたい「古典」として受けとってしまう。けれどもそれは、はじめから絶対的な完成形をとっていたわけではない。試行錯誤も変更もあった。俊成が自分の和歌に手を入れるその過程を追うことで、和歌・和歌集についてこの歌人の考えを読み解くことができる。
目次
はじめに(「歌」のバージョン;藤原俊成について ほか)
1 「久安百首」(記念碑となった「久安百首」;歌人別本から部類本へ ほか)
2 長秋詠草と長秋詠藻(俊成の家集;『長秋詠藻』読本 ほか)
3 俊成家集(二度目の自撰家集『俊成家集』;『長秋詠藻』から『俊成家集』へ ほか)
おわりに(俊成の自讃歌)
著者等紹介
小山順子[コヤマジュンコ]
1976年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、国文学研究資料館・総合研究大学院大学准教授。専攻は、新古今時代を中心とする古典和歌(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
104
ミュージシャンの曲にはいろいろなバージョンがある。例えば、アルバムとシングルのバージョンは異なっている。それと同じように、和歌も歌集ごとに語句が推敲によって変わることを考察した書。取り上げられているのは藤原俊成。推敲と言っても、助詞や助動詞を変える小さなものだが、それによって和歌全体の意味が変わることがよく理解できた。また一字一句をおろそかにしない歌人の姿勢も、浮かび上がってくる。小説などにくらべて短歌は器の小さな文学だが、それでも歌人が精魂込めて作り上げるものであることを、本書は伝えてくれる。2018/01/08
gorgeanalogue
2
和歌が、歌会、歌合、自家集などに収められる際に、字句が修整されてさまざまに変奏されていくことを藤原俊成歌を取り上げて平易に解説。歌のポテンシャルというか味わいが、変化していくのを見るのは面白い。 巻末の俊成の代表歌「ゆふされば……」が自信の一作であったこと、それだけにこの歌は一字も訂正されなかったこと、そしてこの歌が伊勢物語を下敷きにしていることを示した部分はとくに面白かった。2017/06/09
kinaba
0
歌の内的な要請ではなく、配置される文脈に合わせた直しの例が多くを占めていたのが、ちょっと物足りなかった。2019/11/22