出版社内容情報
古事記はなぜ長らくなおざりにされてきたのか? それはこの書が日本書紀とは違い、声による語りを記すものだったことにある。その意味を深く解き明かし、古事記論の基本視座を示す。
内容説明
近世まで、日本書紀と比べるべくもなく、古事記が無視されてきたのはなぜか?「書」を編纂するのではなく、「声語り」を記すとは、そして声で伝承するとは、どういうことなのか?それが遺しえた世界とは何か?古事記論の視座を据えなおす。
目次
第1章 「序」文の検証(天武・元明の意図と太安万侶像;語りのトネリ稗田阿礼の「誦習」 ほか)
第2章 「声語り」という伝承(「くる(繰)」「かく(懸)」という手法を探る
古事の「記」に対する初期認識 ほか)
第3章 日本書紀の無視した「古事」(大国主神の呼称・名字とその本性;イスケヨリヒメの神歌 ほか)
第4章 古事記の遺せた世界(「声語り」の寛容と意図せぬ不都合;「わかれ」の情愛とその作法 ほか)
著者等紹介
木村紀子[キムラノリコ]
1943年生まれ。愛媛県松山市出身。奈良大学名誉教授。専攻は言語文化論・意味論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
9
著者の本でこれ迄読んだ物は、語源散策の如くエッセイ風の物が多かった。本書はテーマを絞った労作である。本居宣長に採り上げられる以前は軽視され、時に偽書説まであった古事記を主題に、これが文字文化以前から繋がる口承伝統を反映したものであることを確認し、その文体や内容を吟味する。対外威信物としての日本書紀とは異なり、豊かな文学性を持つ古事記の姿を明らかにする。確か8世紀の当時、書記文芸の歴史は浅く、書紀は政治的配慮に満ち満ちた物だった。口承文芸にそうした操作は効きにくく、勢い古事記に古例が残る事となったのだろう。2021/06/11