内容説明
朝鮮文学初の近代長篇小説『無情』の初めての完全日本語訳。植民地朝鮮の近代化と独立を志す本書は、その深い心理描写によって近代小説誕生の栄誉を受けるが、同時に近代啓蒙の挫折の影も予感させる。
著者等紹介
李光洙[イグァンス]
1892‐1950。朝鮮近代文学の祖ともいわれる。日本で学んだ独立運動家でもあったが、解放後は「親日文学者」の烙印を押され北朝鮮で死んだとされる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐藤一臣
9
表面的な部分に終始している当時の儒教文化を批判し、個人と民族の自我の目覚めを描いた韓国近代小説の祖となる自伝的フィクション長編。孤児となりながらも教養を身につけた若き男女の三角関係を描いている。1910年の韓国併合時における親日知識人の葛藤が心情が詳細に述べられていて読みやすい。あまり悲壮感が漂っていない文体がいい。2015/10/23
yagian
4
韓国初の近代長編小説。日本統治下の韓国で新聞小説として人気を得たというだけあって、予想以上におもしろい。近代韓国を知るために、もっと広く読まれていい小説。漱石の小説は、近代化で葛藤をした非西洋の人に共感してもらえるのではないかと思っているが、この小説を読み韓国の近代化は日本以上に複雑で大変なんだとしみじみ思った。主人公の設定や内面の苦悶は、二葉亭四迷「浮雲」内海文三を連想させる。近代化が進むと、どの国でもこのようなタイプの人間が現れる、ということなんだろう。2015/09/06
äï
1
1917年に連載された、朝鮮近代文学最初の長編小説。この時代の朝鮮事情には詳しくないけれど、そう遠くない文化圏のことなので、ボリュームがある割にはすんなりと話が入ってきました。 今から見ると登場人物達がギッチギチの古い考えに縛られているのですが(当たり前)、この時代に三従の教えを批判できるような女性が登場して救われる思いがしました。2021/07/26
nene
1
まるで講談を聞いているかのような感じ。ストーリー展開も速くて、元祖韓流?2017/09/20