出版社内容情報
コンゴ民主共和国で、家族6人で平穏に暮らしていたテズの生活は、ある日一変した。隣国ルワンダで起こった大虐殺が、コンゴにも戦乱を及ぼしたのだ。学校が乗っ取られ、教師が殺され、それをかばったテズの父親も殺された。父を失った悲しみを癒す間もなく、一家は着の身着のまま逃げることを余儀なくされる。
着いたのはイギリス・ロンドン。肌の色、文化、何もかもが違う場所で、難民として申請を受け、眠るところすら定まらず暮らす毎日に、家族の心は荒んでいく。特に10歳のテズと、12歳のアディの仲には亀裂が生じた。それでも、住む場所を得るために、そしてまた学ぶことができるように、家族は過酷な日々を過ごしていく。
懸命に生きる一家を支える人たちも現れる。特に母の幼馴染で、同じく戦乱を逃れイギリスに住んでいたカイ一家との再会は、テズたちに希望を与える。しかしカイたちも、大きな傷を背負って難民となっていた。カイはコンゴで凌辱され、夫とは離婚し、戦乱を目の当たりにした息子のエトは精神を病んでいた。その傷はイギリスに来ても癒えることはなく、地域住民の差別の末、エトは命を落としてしまう。
やっとテズたち一家にアパートがあてがわれたが、そのあまりの劣悪さと、もう二度と会えないコンゴの人たちへの思いがごっちゃになって、母は起き上がれない。「私たちは地獄から脱出してきたと思った。でも、地獄を道連れにしてきただけのことだった」とカイは言う。それでも、一生懸命探せば幸せは見つかると信じるカイの言葉に、母はもう一度奮起する。
テズもアディも、イギリスの学校に通えることになった。テズは懸命に勉強して重機の運転士になり、戦乱を逃れた人たちが住める場所を作ろうと心に誓うのだった。
内容説明
あなたは将来の夢を語るとき、こんなふうに言ったことがありますか?「おとなになれたら」おとなになることが難しい、銃声の響く国から逃げてきたテズたち家族。それは、新たな困難の始まりであり、希望を持って歩む人生の始まりでもあったのです―。
著者等紹介
コーンウェル,ニキ[コーンウェル,ニキ] [Cornwell,Nicki]
イギリスで書店を営む両親のもとに生まれ、幼い頃から本に親しむ。児童養護施設で働いたのち、ソーシャルワーカーとなり、異文化・異人種の人たちと交わる。難民施設でボランティアをした経験をもとに「クリストフの物語」シリーズ(文研出版)や本書を執筆する。作家、画家、詩人として広く活動をしたが、2022に病没。本書が最後の作品となった
渋谷弘子[シブヤヒロコ]
東京教育大学文学部卒業。27年間群馬県の県立高校で英語を教えたのち翻訳の道に進む
牧野鈴子[マキノスズコ]
熊本県に生まれる。熊本短期大学教養科美術コース卒業。デザイン事務所勤務を経て画家となる。1983年、絵本『森のクリスマスツリー』(文研出版)でボローニャ国際児童図書展エルバ賞推奨(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
航輝
奏
ガロ
きみどり