出版社内容情報
母とけんかをして、画廊「風待ち」に家出をしてきた美音は、ある特殊な能力を持っていました。それは、絵の中の世界に入り込むこと。個性豊かな絵に入り込むことで母の思いに気づいていく美音。その過程で彼女の能力の秘密も明かされます。
著者等紹介
西村友里[ニシムラユリ]
京都市内の小学校に35年勤務。そのかたわら、創作活動を続ける。『たっくんのあさがお』(PHP研究所)で第25回ひろすけ童話賞受賞。『消えた時間割』(学研プラス)は第52回緑陰図書
こがしわかおり[コガシワカオリ]
埼玉県に生まれる。出版社勤務を経て、フリーに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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chimako
70
絵が好きで美術部に入部した美音。母親はなぜか絵も美術館も嫌う。懇談会で美術部員だとばれてしまい退部届けを提出され、楽しみにしていたスケッチ旅行もキャンセル。やるせない美音はこっそり隠した手紙を頼りに家出。たどり着いた先は叔母の画廊だった。隠された力、絵の中の世界、母が描いた男の子の絵。絵画を通して家族や未来について描かれたファンタジー。挿絵が温かくほっとする。中学生が主人公……にしては少々幼い気がするけどどうなのか。最近の中学生は確かに幼いけれどもう少し凛とした姿を見たかった。母親の頑なさもいただけない。2024/06/03
はる
62
絵の好きな少女の成長を描いたファンタジー。何故か絵を描くことを許さない母とけんかして家出した美音。伯母の営む画廊「風待ち」で暮らし始めた美音は、絵の中に入り込める不思議な力が自分にあることに気付きます……。こがしわかおりさんのリリカルな挿絵が、物語の叙情的な雰囲気を盛り上げていますね。挿絵の力は大きい。特に表紙は素敵。ハラハラする展開もあって楽しかったです。ラストは爽やか。2022/05/26
へくとぱすかる
28
「退部届」という、波乱を予感させるタイトルの第一章。美術嫌いの母のせいで美術部を退部させられた中学生・美音。家出した美音が、絵はがきの住所を頼りにたどりついた家で、夏休みの静かなファンタジーが始まる。翔くん、月子さん、伸江さんという、いつも見守ってくれる人々との日々に、一点の書き曇りのように現れる人物。母親と和解できるか、というリアルな問題と不思議世界が奇妙にリンクして爽やかな読後感を残してくれる。グリーンな装丁と本文にちりばめられたモノクロのイラストが、物語にふさわしい。絵を、覗くように鑑賞したくなる。2024/10/08
白雪ちょこ
23
最初は、中学生の青春ストーリーなのかと思っていたが、結構ファンタジー要素が強めで、不思議な感覚の、絵画を旅する物語となっていた。 挿絵の、筆ペンで書いたような、素朴でふわふわとしたタッチも可愛らしい。 絵に関する不思議な力や、その魅力なども、細かに描かれており、ページのところどころに描かれているイラストも可愛らしい。 主人公の美音の、ほのかな恋心や 助けてくれた翔の存在。 母親との葛藤も描かれていて、ファンタジーだけではなく、家族の絆や血筋などもうまく描かれていた。2023/12/14
花林糖
23
図書館本。絵を描く事が好きな美音。しかし美音の母は絵が嫌いで教育ママ。夏休みに画廊を営む伯母の元に家出をする美音。母娘の葛藤の話かと思っていたら、絵に関して不思議な能力を持つ一族のファンタジーでした。こがしわかおりさんの挿絵と表紙絵が◎。2022/08/22