内容説明
そいつは坂になった道で、どさりと横になっていた。大型の犬で、頭からしっぽまで、白地に黒のぶちがちらばっている。タイガーはいくらか強気になって、もう少し首をのばし、葉のあいだからのぞいた。犬は大きな白い頭をそらし、明るい色の目をほそめて、木の枝ごしにタイガーを見つめた。二ひきはそうして、しばらくにらみあっていた。だが犬は顔をそらし、首にかかった引きひもをかじりはじめた。ひもは首輪につながっている。逆のはしは茂みの中で、かん木にからまっていた。小学4年生以上。
著者等紹介
フローデ,リブ[フローデ,リブ][Frohde,Liv]
1940年、ノルウェーに生まれる。教師として首都オスロの小学校に勤務。デビュー作『だんまりレナーテと愛犬ルーファス』(文研出版)をはじめ、『いちばん奥の部屋』などの作品がある。犬など動物への愛情こまやかな表現を得意とする
木村由利子[キムラユリコ]
大阪府に生まれる。大阪外国語大学デンマーク語学科卒業。北欧の児童書・ミステリーがすきで翻訳の仕事をはじめる
かみやしん[カミヤシン]
1942年、東京都に生まれる。自然と美術の関わりを児童書にもわかりやすく展開している
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
102
お気に入りさんの感想を読んで図書館から借りてきました。虐待された犬と捨てられた猫が一緒にさまざまな家庭のあたたかさに触れながら最後のすみかを探し当てるまでのはなしです。母親代わりの犬と猫が二匹で行く様は家なき子やフランダースの犬を思い出します。このような話に弱い私は読んでいてホロっとしてしまいます。2018/12/24
みゆ
59
初読み作家さん。仔猫と犬の二匹旅&児童書なのでちょっと舐めてました。身勝手な人間、厳しい自然、やっと出会えた優しい人たちとの別れ…とてもリアル。このリアルさを盛り上げるのが家出犬スポット。スポットは擬人化されておらず仔猫のタイガーとの間に会話はなく、自らの気持ちは語らない。なのにタイガー視点の描写のみでスポットの心の変化が伝わって来て胸を打つ。大人が読んでも満足の一冊でした。2018/10/11
ぶち
48
捨てられた子猫と虐待から逃げ出した犬が、親子のように寄り添いながら、勇気と知恵をもって旅をしていく物語です。ノルウェイの自然豊かな風景が、2匹の旅を必要以上に悲惨なものと見せずに、むしろ一緒に旅をしたくなるような明るいものにしてくれています。旅の先々では出会う人々も優しいのです。しかし、なかなか安住の地とはなりません.....。第50回青少年読書感想文コンクール課題図書です。読んでいて一緒に旅をした気持ちになったり、またペット虐待の悲劇にも思いをはせたり、大人が読んでも損はない本です。2018/10/07
ぶんこ
35
捨てられた子猫のタイガーはさまよい歩く。そして虐待されて家出した犬のスポットに助けられる。スポットの母性愛に癒され、タイガーの愛らしさに和みますが、たまさか心優しい家族に出会えても、寒さの厳しい冬には2匹だけになってしまう。どうして置いていけるのか?いつになったら安住の地を得られるのか?不安が募って辛くなった時に、スポットが泣いている赤ちゃんを見守る。赤ちゃんの家族と、本当の家族となったスポットとタイガー。ああ、よかった。どうか置いていかないで。捨てないで。そう願わずにはいられません。2018/12/09
ゆうみい
2
犬のスポットさ、最初「くさり」でつながっていました。その「くさり」を取って、家出をしたのです。そして、飼い主にすてられたねこタイガーと、旅に出たのです。2ひきは仲良く、飢え死をしないようにしていました。いくつもの家から、旅をしました。この本を読みながら、「どうして、タイガーをすてたの?」とか、「がんばれ〜‼︎」と、応えんしたりしました。最後には2ひきに、住み家ができて、良かったです▼とても、感動する物語でした▼とくにオススメなシーンは、「17うまやの火事」です。うまやの「火事を、スポットがとめた」(続)2004/11/04