内容説明
十二年間育ててくれたお父さんだった。ピアノの発表会で、うれしそうに目尻にしわをつくったお父さんだった。クリスマスの翌日、油絵の道具を買ってきてくれたお父さんだった。どの場面にも、お父さんがいた。家庭というキャンバスには、お父さんの色がいっぱいにぬられていたのだ。お父さんの色がぬられていることが当たり前になってしまい、見えなくなってしまったり、うとましく思ったりもした。けれど、お母さんの色とセシルの色、二色だけではどうしても足りない。お父さんの色が入って初めて、家族の絵がかけるのだ。小学5年以上。