感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zero1
67
素朴な中に鋭い視点を持つ。それが金子みすゞ。「大漁」で人とは対極にある鰯の視点は私も驚いた。西条八十(後述)に才能を見出された金子。そんな彼女の生涯は26歳の若さで幼い子を残し自ら死を選んだことで終わる。しかし311の震災で彼女の詩は再び注目される。【こだまでしょうか?】は最後の一行が、いかにも彼女らしさ。後半には英語訳された詩を対訳で紹介。ほのぼのとした絵も素晴らしい。今までレビューがないのが不思議な一冊。金子の作品世界を、多くの人に知ってほしい。2020/05/18
とよぽん
50
一見して、古い絵本?と思ったが、2020年1月発行の、比較的最近の作品だった。物語と詩の英訳というのに3人のお名前。何?と思ったが、矢崎節夫さんの「まえがき」にこの絵本がどのようにして私たち日本の読者に届けられたのか、ということが書かれていて納得した。アメリカの作家デイヴィッド・ジェイコブソンさんの心底から捧げられた至宝のような作品だと思った。羽尻さんの絵も、金子みすゞの時代の雰囲気を叙情的に描いて見事。心に沁みる。薄幸だったけれど希有の童謡詩人のまなざしが温かい。良書。2022/03/05
たまきら
44
金子みすゞの詩は感傷的すぎて苦手ですが、彼女の幸福とはいえない人生を知ると、ささやかな日々の出来事に輝きを見出す姿に胸を締め付けられそうになります。エミリー・ディキンソンとよく重ねていたんですが、金子みすゞは「童謡詩人」として当時は評価されていた人だったんですね。夫をはじめ、周囲の応援があればもっともっとことばが残っていたかもしれないんだなあ…。RBGやジョージア・オキーフのように、妻を束縛せず支え続ける夫(パートナー)って、稀有…。2023/01/16
がらくたどん
38
う~ん、これは欲しくなる本。紙質の柔らかさが借り物だととても気を遣うレベルだが、いつまでも触っていたい質感。「金子みすゞって、だれ?」という伝記部分と英和併記詩集の2部構成。「いちどは失われたみすゞの詩」という副題が作品コンセプトを良く現わしている。自死と戦火で未発表のまま眠っていた原稿が矢崎氏により光を当てられ、震災時の公共広告でさらに照らされた経緯を包まずに記す。広告は作者の多面性に特定の印象的な色を付けた気がしていたが、彼女の短い生涯の節々に添えられた詩がとても良く考慮されていて感嘆する意欲作。2022/02/24
のえる
31
図書館絵本。 金子みすゞの作品が一度は失われていたなんて驚いた。唯一の手帳を家族が大事に残しておいてくれて本当に良かった。 金子みすゞの伝記と詩集がまとめられた本書。詩集は英訳付。 金子みすゞの詩は優しくて美しくて、ものに息吹を込め、思いやりで溢れてる。学校の授業で学んだ気もするけど、青春時代に比べたら経験を積んだからか、3.11を経験したからか分からないけど、以前にも増してこの感性の世界に心を打たれた。 分かりやすくて穏やかな絵もまた作品をより良く盛り上げている。 また触れて味わいたい絵本。2021/03/12