内容説明
嵩と千尋、山と海―。二十二歳で海に散った弟を詩と絵で綴った18編の絶唱。未発表エッセイ収録!
目次
父の死
母とのわかれ
夏の川で
赤い着物
坊ちゃんの兄
朝やの星
シーソー
はれたオチンコ
道信山の夕やけ
背負い投げ
父の写真
ただ一度の小づかい
スケッチボックス
風の中
ちいさな木札
珊瑚
海彦・山彦
墓前で
著者等紹介
やなせたかし[ヤナセタカシ]
1919年2月6日、高知県出身。東京高等工芸学校図案科(現千葉大学)卒業。東京田辺製薬宣伝部に入社後、徴兵。復員後、高知新聞社入社。その後上京、三越宣伝部にグラフィックデザイナーとして勤務の後、フリーとなる。1973年月刊『詩とメルヘン』(サンリオ)の編集長に。この年、フレーベル館の月刊『キンダーおはなしえほん』に「あんぱんまん」を掲載。以後、アンパンマンシリーズ他多数の絵本を出版。絵本作家のほかに詩人、作詞家、作曲家、脚本家、舞台演出家等多彩な分野で活躍。2013年10月13日没、享年94歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
110
22歳で戦死したやなせさんの弟さんに捧げる詩と絵。郷愁を誘う優しい絵が素晴らしい。詩にこめられた弟さんに対する深い愛情に胸がつまる思いだった。複雑な生い立ちを知って、明るく朗らかな人というやなせさんに対するイメージが変わってしまった。やなせさんの戦争を憎む姿勢は弟さんの戦死も影響しているのだろう。2014/12/28
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
62
読友さんのレビューで知り手に取る。以前やなせたかしの自伝を読んだ事があるので、題名を見ただけでもう切なかった。著者の弟・柳瀬千尋さんは海軍特攻隊に志願し、22歳の若さでフィリピン沖で戦死。遺骨さえ無い。その弟さんを「自分よりも優秀で眉目も秀麗だった。何故彼が死に私が生きた」という傷みをずっと抱えた著者の、弟との交流を描いた詩画集。実に誠実で、弟への劣等感から暴力を振るった事も正直に記している。色んな思いを抱えていた弟さんの死と、老いても墓前で途方に暮れていたであろう著者を思うと泣いてしまった。2015/02/25
kimi
59
「人生に、たらは禁物です」とくに「シーソー」が、なんだかたまらない感じがしました。2015/12/11
たらこ
57
若くに戦死した弟さんへのレクイエム本。優しい絵と弟さんへの想いがいっぱいでした。元気で朗らかなおじいちゃんのイメージとは裏腹に幼い時から大変な苦労があったんですね。戦争から帰って来た弟さんの骨壷には「海軍中尉柳瀬千尋」と書いた木札が一枚…切ないな~今頃、二人仲良く天国でアンパンマンの歌を唄ってますか?2015/01/06
ぶんこ
54
著者5歳弟3歳の時に父を亡くし、母は子供たちを伯父の家に預けて再婚。後に弟だけが伯父の養子となったことで、戸籍上は著者が一人ぼっちとなったとあり、胸が締め付けられる。兄弟喧嘩をしながらも助け合ってきた。たったひとりの身内であった弟を戦争で亡くしたことが、アンパンマン誕生のきっかけになったと別のエッセイで読んだことがあります。この白黒の挿絵と詩からは淋しさと愛しさ、著者の優しさが感じられます。2019/04/08