出版社内容情報
「私が存在すること」の不可思議さをわかりやすくスリリングに解き明かした名著、待望の文庫化!
内容説明
手軽なニューエイジ思想やポップ哲学と戯れることで文学的空想や宗教的法悦に一挙に飛躍しようとするよりも、一歩一歩の地味かつ地道な論証を積み重ねていった方がそうした超越的境地へ深く入り込める。最強の思考ツール「可能世界論」を徹底的に解説した名著、文庫化!
目次
序 「何でもあり」の世界観―可能世界へようこそ
第1章 可能世界に何ができるのか
第2章 可能世界のネットワーク
第3章 可能世界とは何なのか
第4章 可能世界は本当に有るのか
第5章 自然科学と可能世界
第6章 可能世界の外側
第7章 応用編―可能世界で難問を解く
付 可能世界ブックガイド
著者等紹介
三浦俊彦[ミウラトシヒコ]
1959年、長野県生まれ。東京大学文学部美学芸術学科卒業。89年、同大学院比較文学比較文化専門課程修了。東京大学教授。研究分野は、美学、形而上学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおにし
15
20年前に旧版に挑戦してみごと敗退してしまったが、今回は何とか読破できてうれしい。改訂版になっても難解な本であることには変わりがない。20年間で私の頭脳が成長したのか?単に縦組みの旧版が改訂版で横組みとなり、論理式が見やすくなったのが読破の理由かもしれない。この本の攻略法としては各種可能世界論の解説で心が折れそうになっても、量子論との比較が登場するところまで我慢して読むことだ。私は多次元世界解釈のところでついにロジカル・ハイを体験。2封筒問題の様相実在論+貫世界同定での解説には本当にシビレますよ。2018/11/11
月をみるもの
14
ルイスの様相実在論を学ぶと、エヴェレット多世界解釈との類似性が気になり、いろいろ探してたらこの本に辿りついた。テグマークのマルチバース宇宙論の話とかもちゃんと言及されてて感度高い。因果は反実仮想なくして定義できず、多世界をまたげるのは「意識」だけなのだとすると、因果の輪から抜け出す=「意識」がなくなるってことなのか。。死なずに意識=煩悩なくすのが悟りってこと? 2023/08/11
うつしみ
9
様相実在論はあまりにSF的なので整理が必要だ。誤読しているかもしれないが、私なりの理解を記しておく。まず、論理空間という宇宙(時空)を超えた場があると仮定する。飽和性の原則から、論理空間では起こりうることは全てどこかで起こっていなければならない。可能性の数だけ世界が存在することは必然的要請であり、論理空間には無限個の可能世界が存在している。可能世界は互いに独立で行き来はできないが、類似関係で結ばれた到達関係はある。もし○○だったら○○だっただろうという反実仮想は、可能世界同士の到達関係を述べた命題である。2023/09/14
Z
7
前半部は教科書的によくまとまっていて勉強になったが、後半は応用的な側面が強く問題関心共有しないとあまり面白く読めないと思う。前半、可能や必然というshouldやcanなどを用いた論理学の公理をあげ、Shouldを義務、canを許可(権利)と言い換えれば、様相論理を使って倫理学に応用できる(この本では展開されていないが)や、可能世界論の類型がのっていたり、結構刺激的な視点が提示されており、面白かった。後半部は現実世界への応用というより、可能世界が実在するとしたらどのようなものかと、可能世界の論理的整合性めぐ2017/05/06
あ
5
可能世界論は英米系の思想圏における中心的話題であり、その存在論的身分についての根本的な疑問は尽きないものの、応用範囲が広く非常に強力なツールであることは間違いない。本書は可能世界の存在論的身分に関する哲学的議論を手際よく纏めつつ、様相論理の初歩を導入して2封筒問題へのエレガントなアプローチを披露するなど、可能世界論の応用面についても多岐にわたり紹介している。世界がどうたらこうたら言ってる存在論には個人的にあまり生産性を感じないが、様相論理の応用力には惚れ惚れする。Cresswell読まねば......2021/12/14