出版社内容情報
田宮流抜刀術の達人で三味線の名手、矢内栄次郎を襲う権力の魔手!吉川英治賞作家が人生と野望の深淵を鋭く描く!
内容説明
御徒目付矢内家の次男栄次郎は、田宮流抜刀術の達人で三味線の名手である。冬のある日、師匠の杵屋吉右衛門に呼ばれ“東次郎さんが半月以上顔を見せずに心配”と言われ、兄弟子東次郎宅を訪ねるが、まったく相手にされず疑惑と焦燥に苛まれる。一方、旗本坂本家は作事奉行の要職にあり、次男の東次郎は、父東蔵を囲繞する巨悪に苦闘していた…。
著者等紹介
小杉健治[コスギケンジ]
1983年『原島弁護士の処置』でオール讀物推理小説新人賞を受賞。87年『絆』で推理作家協会賞、89年『土俵を走る殺意』で吉川英治文学新人賞を受賞。1947年、東京に生まれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sken
7
えっと……これ、タイトル間違ってませんか? 今回はどう考えても東次郎江戸暦ではないかと思うのですが。冒頭は大事な舞台を前に失踪した三味線の兄弟子・東次郎を探すことになる栄次郎なんですが、途中からは視点すら東次郎のものとなって、大店と宮大工の頭領を襲った一味の探索のために盗賊一味に潜入して、陰で陰謀を企む巨悪と戦う様を描いております。父親に迫る悪の手を追求するために、あえて勘当され破落戸に扮してまで戦う東次郎の柔術の冴えとか、わりと面白く読めたのですが、どう考えても主人公が違いますってばさ。2013/04/30
chacha
6
シリーズ九ですが、栄次郎はほとんど出てこず、三味線の兄弟子である東次郎の活躍。なかなか手の込んだ作りでした。悪は手を組金儲け。昔から決まっているのですね。次は、栄次郎の活躍がみたいですね。2018/01/05
ひかつば@呑ん読会堪能中
6
こうきましたか!いやぁ驚いた。 めちゃくちゃ面白い話だったが、今回は「番外編」かな。まさかコンビを組んで、てことはないよな。2013/05/04
アンドレス
4
今回は栄次郎も新八もほとんど出番がなく、栄次郎の兄弟子である吉次郎こと坂東東次郎が主役の話でした。 今作もそうでしたが、栄次郎江戸暦シリーズはどの作品も「文庫書き下ろし時代小説」としてのクオリティを充分に備えており、毎回安心して楽しめます。 今後も引き続き読んでいきたいと思います。2024/04/06
FK
3
シリーズ第9作。こういうのは好きだ。世間的に悪人とされている人物たちと組んで、より大きな悪を倒すという。敵の敵は味方、という言葉もある。上手い作者だと思わせられる。/今作は主役が交代で、栄次郎の兄弟子の吉次郎が活躍する。長く続くシリーズ物では、こういった趣向もできるのだ。これまでどんな人物かよく分からなかったが、今作でそれがうかがえる。庶民の一人でもある木場で働く面々とのやりとりもいい。 2014/09/25