内容説明
「マンガこそが日本の世界に誇る最高の文化である」と著者は言い切る。だからこそ、本格的なマンガ論の出現が待たれていたのだ。洪水のように出版され続けるマンガ出版物について、俗論ばかりが語られてきたが、本書の刊行を画期としてマンガ評論の流れは明らかに変わった。海外にも知られた、論争的にして威風堂々の現代日本マンガ論。
目次
第1部 現代マンガの理論(マンガ評論はどのようになされてきたか;マンガ評論の現状;現代マンガのための理論)
第2部 現代マンガ概史
第3部 作家論・作品論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
xtc1961ymo
9
最初の情報センター出版局版で読んでましたが、増補版として文庫で出てたとは。今読んでも見事に鑑賞に耐えます。悪例としてあげられてる評論家「石子順」の手塚治虫漫画館買って何じゃこの適当さとやる気の無さはと私も愕然としましたよ!少女漫画には及び腰なのがいまいちとは思うがそれは著者も言及してること。ガロ、コムからエロ劇画誌、ニューウェーブと呼ばれるものまでバランスよく取り上げていて、本当に今までになく総論と各論が補い合って有機的に漫画を捉えてます。名著です。2014/12/04
とんび
2
序盤のマンガ評論批判は、よほどひどい評論を読まされ続けた鬱憤が噴出していて、なんというか御愁傷様という他ない。この本があって、今の漫画評論は、当時よりいくらかましになっていると思う。2009/04/27
booklight
1
書評は難しい。漫画の書評はさらに難しい。そもそも面白くないことが多い。福田和也は、作家が悪いのでもなく、書評というものが悪いのでもなく、書評家に芸がないのが悪いのだ、というようなことを言っていた。呉氏のほかの著作は面白いのだが、本作は権威付けようとしてか、面白み自体は少ない。こちらの知識不足か。2016/10/19
bach
1
マンガはやはり娯楽作品なので、その評論は「ひいきの引き倒し」のような内容になりがちであるが、本書は努めてそのような感情を排し、論理的に「評論」している。初版が30年ほど前なので、現在進行形の作家・作品は当然だが対象ではない。2013/01/03
傘緑
0
ここで敢えて自分の政治信条をいうつもりはないが、常に刺激を受けている封建主義者・呉智英のマンガ論。個人的には要再読、要再々読の一冊。この本そのものを消化しきれてないし、読む前に血肉にすべきマンガを圧倒的に読んでなかった。わが身の無知が痛いほど知られる。2016/08/18