内容説明
悪名轟く盗賊・熊五郎に夫を殺されたお延。ある日、お延は病に苦しむ旅の男を茶店にかくまい、そのまま深い仲になってしまう。ところが、その男の特徴が、逃走中の熊五郎とソックリであることがわかり…。女心の機微を描いた『熊五郎の顔』のほか、『あばた又十郎』『喧嘩あんま』『おしろい猫』『顔』の五編の傑作短編を収録。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
1923年、東京生まれ。戦前は徴用工員や海兵団員を経験、戦後は東京都職員となる。その後、長谷川伸に師事したのち、劇作家、舞台脚本家として活躍。1960年に『錯乱』で直木賞を受賞してからは、本格的に小説執筆に専念。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』などのシリーズが絶大な人気を博し、1977年には吉川英治文学賞、1988年には菊池寛賞を受賞した。1990年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HIRO1970
24
☆★☆昭和37~39年の作品の新装版ですが、何と全て私は未読のものばかりだったと思います。しかもどの作品も本懐編よりも数段良い作品だと感じられたので、編集者は同じ人とは思えない程です・・・不思議な事もあるもんです。やはり正ちゃんの真骨頂は因果応報や因縁が滲み出る人情編にあるのかも知れません。久々に正ちゃんワールドをたっぷりと堪能出来まして大満足でありました。お勧めです。2014/02/10
ドナルド@灯れ松明の火
20
池波さん初期小説集。短編がうまくなければ、いい長編は書けないという長谷川師匠の指導もあり、短編で腕を磨いた時代の短編だが、昭和30年代後半のこの人情編はすでに完成度が高くプロットと共に読み応えがある。お薦め2017/05/28
えみ
16
多分、この既読感は、どれかの話の加筆前か加筆後の作品だからかな。サクサク読める短編5篇。池波作品は、長編の組立も素晴らしいけど、魅力の一部がクローズアップさらた短編も素敵。2015/06/27
タツ フカガワ
12
作中の人物が呟く、人生には「こういうことも、あるものなのだなあ…」という5話の短編集。いずれも最後のどんでん返しがいかにも池波節で面白い。ちなみに表題作は本書には未収録。2019/10/27
そーいち
10
上司が長編の真田太平記にどっぷりつかっているので自分は池波先生の短編を読む。江戸の人情噺とあって流石に面白い。この時代の独特な風習を上手にまとめて、かつ分かりやすい現代語でまとめているために非常に読みやすくサクサクすすむ。勧善懲悪の時代ならではのラストには妙に納得する自分がいた。池波先生、やはり面白いなあ。2023/06/29