出版社内容情報
北森 鴻[キタモリ コウ]
著・文・その他
内容説明
ひっそりとアパートの自室で息をひきとった、初老の俳人の片岡草魚。なぜか彼の身元や血縁関係を示すものは何一つなかった。俳句仲間でフリーライターの飯島七緒が、残された句帳から過去を追っていくと…。東京は三軒茶屋の路地に、ひっそりと佇むビアバー「香菜里屋」。料理も絶品なマスターの工藤が、常連が持ち込んでくる謎と人生を解き明かしていく連作短編集。
著者等紹介
北森鴻[キタモリコウ]
山口県下関市生まれ。1995年、明治初期の歌舞伎界を背景にした『狂乱廿四考』で鮎川哲也賞を受賞。2010年に48歳で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
五右衛門
50
読了。噂はかねがね聞いていましたが短編でこの世界観が堪りません。登場人物も入れ代わり立ち代わり登場するし安心感がありこの作家さん流石です。続編も続けていきます。淋しすぎる結末もあり、ホッとする結末もあるし人情ミステリーかな。いやいやドキッとするミステリーもあるし…う~ん。でも好きです。皆さん読んでみそ。2021/11/30
アルピニア
45
書名が好きな句の引用なので、ずっと気になっていた作品。ご縁があってやっと読めた。6篇からなる連作短篇ミステリー。住宅街にひっそりと開いているビアバー「香菜里屋」で、マスター工藤さんと常連客によって語られる謎と推理。なんといっても工藤さんの鋭い洞察力と温かい眼差し、そして登場する美味しそうな料理が魅力。表題作「花の下にて春死なむ」と「魚の交わり」が良かった。草魚さんの句に滲みでた隠した過去、秘した想いに胸を打たれる。真実がわかっても哀しみは残る。2018/07/19
ユメ
44
三軒茶屋の路地にひっそりと佇むビアバー香菜里屋を舞台にしたミステリ。主に常連客が持ちこむ謎をマスター工藤が解決し、時には工藤の方が謎を提示することもある。居合わせた人間は安楽椅子探偵に扮するのが暗黙の了解となっている店の雰囲気はミステリアスだ。印象的だったのは、香菜里屋に集う人々にとってはあくまで事件を解決するのが目的であり、それを裁くことはしないこと。彼らは犯罪事件の犯人を突きとめることもあるが、それ以上関与することはしない。それは彼らの粋や情でもあると同時に、冷え冷えとした怖さもあり、深い余韻を残す。2018/07/15
yu
35
双葉文庫にて再読。 表題作もよいが、『魚の交わり』が抜群によい。表題作あってのこれ。草魚さんの過酷な人生に、言葉が出てこない。真実が必ずしも人を幸せにするとは限らない。優しい嘘と、それにひっそりと気づいていた時間。草魚さんの空白の時間は、決してただの空白ではない。北森さんの新しい作品が読めないことが、こんなにも辛いと感じる極上の作品。2016/09/09
へいがぁ
8
講談社文庫以来の再読。このシリーズはとても好きでした。解説にあった後日談も読んでみたかったです。R.I.P.2016/07/19




