出版社内容情報
宇津木葉子の家に、兄の息子が大学受験のためにやって来る。兄は癌に冒され、死期が迫っていた。葉子は離婚を経験し、今は妻のいる男性と付き合っているが、男性の妻が殺されてしまう……。「どこかに帰りたいと思う気分、帰りたいと望む心を描いてみたかった」と語る著者が、日常生活の中で起きる事件と、それによって変化していく心情を丁寧に描く。
内容説明
フリーカメラマンの葉子は36歳の時に離婚。子どもはなく、東京のマンションに1人で暮らしていた。葉子は仕事先の編集者、杉浦と不倫関係にあったが、時を違えて甥と姪が長野からやってくる。2人の父親、葉子の兄は癌を患い闘病していたが、2人はそれぞれ事情を抱え、実家を出たいと強く願っていた。―日々の生活で次々と起きる問題に直面し、様々な感情に揺れる葉子。今では空き家となり、朽ちた故郷の家に思いを重ね、過ごしてきた時間の中で徐々に積もっていった「心のしこり」と向き合う。
著者等紹介
乃南アサ[ノナミアサ]
1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務を経て、88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞の優秀作になりデビュー。96年『凍える牙』で第115回直木三十五賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞を受賞。また、16年には『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きょん
47
2002年刊行された同名の新装版。主人公の葉子はフリーカメラマンで東京で一人暮らし。甥と姪がやってきたり、不倫相手とのゴタゴタや殺人事件といろんな問題に直面する。殺人事件よりも実兄や義姉、甥姪との関係を中心に話は進む。大人たちがそれぞれ自分勝手で、それに振り回される子供たちと葉子が気の毒。崩壊していく実家への思いをはじめ心の機敏の描写が細やか。2024/09/02
くろにゃんこ
34
ほぼ一気読み。フリーカメラマン、バツイチ。そんな葉子の生活に甥っ子の居候、姪っ子の居候、末期がんの兄、不倫関係だった男の妻の変死…など次々と色々なことが起こる。急に考えることが多くなる疲れってあるよね…自分のことじゃないと特に難しい。ページ数も多くて疲れたが、最後にはどんどんピリオドを打って葉子もホッとしたかな。2024/10/26
わむう
28
フリーカメラマンのバツイチの葉子。東京で一人暮らし。出版社の男性と不倫中。両親はすでに他界し、実兄は癌で入院している。甥を大学受験のために居候させるが、彼が実家に戻った後、入れ違いで姪が居候しにくる。不倫相手が妻の殺害容疑者になり、兄嫁と子どもたちの不和、実家の相続問題、姪の心の傷など、今まで未来が不安ながらも1人気ままに暮らしていたのに一度に心配事がやってきます。引き換えに誰かと暮らすことに喜びもわいてきます。静かな作風ですが絶えず順番にいろんな事が起こり、読み手を飽きさせません。2024/10/13
あっ!chan
26
津軽での重たい描写が物語全体に漂う雰囲気を予感させる。主人公は故郷を捨てたバツイチフリーカメラマン、小さいころから折り合いが悪かった兄に余命宣告、その妻は同級生だが気が合わない、息子も娘も両親と険悪な関係で家族が崩壊寸前、一方自分自身の仕事仲間かつ不倫相手には妻殺しの容疑がかかりあげくに自殺、主のいない実家は廃屋同然...と次から次へと問題が彼女の生活を脅かしていく。「現状から逃げ出したい」といったり来たりする女性の心理を繊細な描写で描くストーリにほとほと疲れたが、ピリオドがちゃんとうてたのかな?2024/06/24
ゴルフ72
26
津軽で見たあの重く苦しくなるような風景がこのものん語りの肝になっているような気がした。最初から最後まで重く苦しい情景や人間関係が繋がる。葉子はバツイチのプロのカメラマン、ある日兄の末期癌の知らせが・・・不倫関係にあった編集者杉浦の妻の死、そして杉浦自身の自殺、兄嫁志乃との関係、甥っ子姪っ子・・・栃木の実家の処分で見えてくる彼女の母への思い…いくつものパズルが繋がって・・・それが彼女の人生なのか?2024/06/19