出版社内容情報
北の大津波に呑まれて喜び以外の感情をなくした孤独な高校生・沖晴が、余命1年の音楽教師の京香と出会い、『心』を取り戻していく。泣いたり笑ったり、怒ったり、あたりまえの『感情』はこんなにも愛おいものだったのか。海と階段の美しい街で、沖晴の歌声と京香のピアノが儚くも優しく共鳴する。感動の青春小説が待望の文庫化!
内容説明
11年前、北の大津波に呑まれた沖晴は死神と取引をしたという。人間の五大感情のうち『悲しみ』『怒り』『嫌悪』『怖れ』を差し出し、『喜び』だけが残されて生還した。高校生となった沖晴が瀬戸内の階段町で出会ったのは余命一年の音楽教師・京香だった。笑うことしかできない沖晴は京香と心を通わせることで次第に感情を取り戻していく。沖晴は京香の命が尽きる前に普通の少年に戻れるのか。感動の傑作青春恋愛小説、待望の文庫化!
著者等紹介
額賀澪[ヌカガミオ]
1990年生まれ、茨城県出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。2015年に『屋上のウインドノーツ』で第22回松本清張賞を、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。16年、『タスキメシ』が第62回青少年読書感想文全国コンクール高等学校部門課題図書に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
dr2006
33
「きっと運よく死んでないだけ」人は理由なく死ぬ。それがいつなのかだけだ。人は感情があることで良くも悪くも人生を華やかにしている。大津波で両親を亡くし一人だけ生き残った志津川沖晴は、人の基本感情のうち(喜び)以外の感情(嫌悪、怒り、悲しみ、恐れ)を失ってしまう。2年前から遠い親戚が住んでいた階段町の家に一人住む沖晴は、余命1年の罹患を機に故郷の階段町へ帰ってきた踊場京香と出逢う。沖晴は京香と心を通わせることで次第に失った感情を取り戻していくが…。複数の感情が合わさり「愛情」が生まれる。心の深奥に刺さる作品。2025/11/27
よっち
32
病気で余命一年の宣告を受けて教師を辞め故郷に戻ってきた桶場京香。そこで北の大津波で家族を喪い引っ越してきたという、笑うだけの不思議な高校生・志津川沖晴と出会う物語。常に微笑み、スポーツ万能で一度覚えたことは忘れず、驚異的な治癒力を持った沖晴が抱える秘密と孤独。感情を失った沖晴と余命のない京香の出会いをきっかけに、少しずつ沖晴が自らの感情を取り戻してゆく展開でしたけど、様々な想いを積み重ねた結末は残酷で、けれどその忘れられない思い出を胸に刻みながら、未来へと希望を見出してゆく姿がとても印象に残る物語でした。2023/10/10
なみ
22
津波に呑まれたときに、死神から負の感情を奪われ、『喜び』だけが残された高校生の沖晴。 彼は余命1年の京香と出会い、1つずつ感情を取り戻していく。 少しずつ人間らしくなっていく沖晴と、死が迫ってくる京香の対比が印象的でした。 2人の関係性も素敵で、だからこそ離ればなれになってしまうことに胸が苦しくなりました。 ただ悲しいだけの話ではなく、読んだあとに前を向けるような、爽やかな作品です。2023/11/05
やなぎ
20
死神と取引をして感情を失った沖晴くんと、献身的に支える元音楽教師の京香の話。二人は次第に…、と期待していたが、そうはならなかった。ちぇ。しかし、僕は未だに、震災をテーマにした小説が嫌いだ。こんなに大変だった、辛く悲しかった、というアピールが不謹慎に思える。或いは関わりたくないと思って避けているのかもしれない。病に苦しんだり、身近な人が亡くなる話は、読むのが辛い。でも僕は、それと真逆なシーンで涙腺が崩壊した。あぁ、結婚したい…(笑)。怒りや悲しみ、恐怖といったネガティブな感情も、生きていく上で(↓)2025/03/05
ぽっぽ
20
いろんな要素がいっぱいの作品、難病物かと思いきやそう単純ではない。津波で家族を失い、笑う以外の感情を失った沖晴は、悲しみに押しつぶされないための自己防衛であったか。余命宣告された京香との触れ合いの中で、少しずつ失った感情を取り戻す過程には痛みも伴います。生と死の狭間で揺れ動き、積みあがっては壊れる心の描写が秀逸。期待以上の作品でした。2024/04/26




