出版社内容情報
夫婦あわせて、もうすぐ180歳。中年となった3人の息子たちは、全員独身――。明石家の主、新平は散歩が趣味の健啖家。妻は、散歩先での夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男はしっかり者の、自称・長女。末っ子は事業に失敗して借金まみれ。……いろいろあるけど、「家族」である日々は続いてゆく。飄々としたユーモアと温かさがじんわりと胸に沁みる、現代家族小説の白眉。解説・木内昇
内容説明
夫婦あわせて、もうすぐ180歳。中年となった3人の息子たちは、全員独身―。明石家の主である新平は散歩が趣味の健啖家で、女性とのコミュニケーションが大好き。妻は、そんな夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男は恋人が男性の自称・長女。三男はグラビアアイドル撮影会を主催しては赤字で、親に無心ばかり。皆いろいろあるけれど、「家族」の日々は続いてゆく。そんな一家の日常をユーモラスに、温かな眼差しで綴った物語。
著者等紹介
藤野千夜[フジノチヤ]
1962年福岡県生まれ。千葉大学教育学部卒。95年『午後の時間割』で第14回海燕新人文学賞、98年『おしゃべり怪談』で第20回野間文芸新人賞、2000年『夏の約束』で第122回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ショースケ
146
インパクトのある一冊だった。明石新平89歳、妻英子88歳。息子3人は未だ独身。毎朝決まった体操、食事のルーティーンをこなし、1人散歩に出かける。思うままに歩き、喫茶店に寄り、薯蕷饅頭を買って帰る。新平の日々は前途多難。妻は認知症、長男は引きこもり、次男はオネエになり、三男は借金まみれ。若き頃の新平の浮気を思い出し、毎朝『女のところに行くのだな』と老いた妻にネチネチ疑われながら家を出る。現代の話題性がてんこ盛りな一家だが、藤野氏は明るくユーモラスに新平の日常を描く。考えさせられ、そして楽しい読書だった。2024/02/25
モルク
130
夫婦の年齢を合わせると180歳。夫婦のなれそめ、妻の姉の家に居候した新婚時代、会社を興し家も新築と家族の歴史が刻まれる。が、3人の息子たちは50歳近いがいずれも未婚、長男は引きこもり、次男はゲイ、三男は親に借金まみれで親に金の無心をするはで問題だらけ、さらに妻が認知症の気配で夫の浮気を疑うと追い打ちをかける。主人公のじいさんは散歩をしながら喫茶店やレストランで洋食をがっつり食べる。それがじいさんの至福の時間。普通でない家庭の普通の時間をコミカルに描く。今を楽しむじいさん。それっていいね。2024/01/24
昼寝猫
117
明石新平89歳、妻の英子88歳。3人の息子たちは50歳前後にして揃って独身。しかも引き篭もりとLGBTと借金まみれ。妻は認知症気味。絵に描いたような80-50問題の当事者だ。建設会社を興してそれなりに成功した新平だが老後の生活はあまり幸福ではないようだ。だが新平はへこたれてはいない。毎日のように散歩に出ては女性にちょっかいを出すエロ爺ぶりだ。当然妻には浮気を疑われている。多少の金銭的余裕があるからできるのだろう。しかし最後の場面では自らの人生への覚悟を示す。淡々とした描写ながらコミカルで味わい深い物語だ。2024/02/03
niisun
85
藤野さんは『君のいた日々』に続き2冊目ですが今回も良かった。60歳前後を“アラ還”なんて言うから、この作品の主人公は“アラ卒”とでも呼ぶのかな?齢90歳のじいさんが、認知症が始まった妻や50歳独身の息子3人に囲まれた問題多めの家族の中で、ひとり散歩を楽しみに生きる日常を軽快に描いた作品。さすがは芥川賞、野間文芸新人賞の受賞作家だけに、何が起きるわけでもない日常を味わい深く描いています。私も散歩が大好きで、30代の頃は暇さえあれば、ひとり街を歩き、手頃な酒場で一杯引っかけていたのを懐かしく思い出しました。2023/08/31
セシルの夕陽
78
じいの散歩は本格的だ。昼前から出発し、途中で洋食をガッツリ食べる。そして建築物を見たり、芸術観賞した後、仕事場だった事務所へ。そこでもう一つの趣味のエロ収集を眺め、夕食に間に合うように帰宅する。明石新平89歳の生活と人生が、気になる。とにかく気になる(笑) 88歳の妻:英子は、新平の浮気を疑い認知症の兆しがある。3人のアラフィフ独身息子は、引きこもり・自称長女・アイドルオタク延長の仕事で借金まみれ。先行き不安な状況なのに、大らかでコミュ力凄い新平の日々は続くのだ。お茶目なじい物語を笑いながら読了😆2024/01/07