出版社内容情報
若き能楽師とその弟子が応仁の乱前夜の京都で人々の心のなかの鬼が生む事件に立ち向かう――。選考委員の絶賛のもと、第36回小説推理新人賞を受賞した表題作のほか、混迷の時代を生きる人々を活写した衝撃のデビュー作、待望の文庫化。
内容説明
能面打ち師が拾ってきた顔に傷がある女。その女の素性を調べていくと、京の都に巣くう「鬼」の姿が浮かび上がる(「鬼女の顔」)。都で名高い桜の木を愛でる老貴族を襲った厄災。その背後には南朝の残党が…(「桜供養」)。京の街で土倉(高利貸し)が襲われる事件が続発する。都を騒がす事件の真相とは!?(「去にし時よりの訪人」)。応仁の乱前夜の京の都で観世座の若き能楽師と訳ありの弟子が人々の心に棲む鬼が起こした難事件に立ち向かう、第36回小説推理新人賞受賞作家、圧巻のデビュー連作集。
著者等紹介
蓮生あまね[ハスオアマネ]
1980年福島県生まれ。北陸大学法学部卒業。2014年「鬼女の顔」で第36回小説推理新人賞を受賞。19年、単行本『去にし時よりの訪人』でデビューした(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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真理そら
50
『去にし時よりの訪人(いにしときよりのとぶらいびと)』を加筆・修正・改題のうえ文庫化。文庫化されたということは続編が期待できるかも?2023/05/13
coldsurgeon
5
公家武家のみならず庶民の意識・社会構造の大転換点であった室町時代を背景に、洛中での事件を追った時代劇ミステリーであった。応仁の乱の直前と思われる頃、洛中の街を想像しながら読む物語は楽しかった。観世座の若主人、その一座のの謎の若き主人公など、少しわかりにくい人間関係が、物語の深みを形作っていると思う。現実世界はあやふやだからこそ、人は分かりやすい物語を求め信じたがるのは、人間の性なのだろう。どの人の心にも鬼が棲むとすれば、自らの悪行を都合よく心を塗り替えるか。2022/06/13