出版社内容情報
派遣社員の瑠璃は男と別れたばかり。これまで仕事も私生活も順調とはいえず、部屋で家庭用プラネタリウムで作り出す星空を眺めるのが好きな27歳。ある日、少女・ジュラと出会い、どこか不思議な雰囲気を持つ彼女に興味を持つ。やがて〝事件〟が起き、二人は街を出る。――人間の細やかな心情をじんわりと描いてきた直木賞作家が描く感動作。
内容説明
派遣社員の瑠璃は、コンビニエンスストアで万引きをしようとした少女を見かけ、声をかける。少女は、親の借金のためにある男から性的搾取をされていた。少女の不思議な雰囲気に惹かれた瑠璃は、遠方に連れて行かれそうになる少女を衝動的に救う。2人は追われる身となるが、逃亡生活を送るうち、瑠璃にある感情が芽生える。“人間愛”を描き続ける直木賞作家の感動作。
著者等紹介
朱川湊人[シュカワミナト]
1963年大阪府生まれ。慶應義塾大学卒業。出版社勤務を経て、2002年「フクロウ男」で第41回オール讀物推理小説新人賞、03年「白い部屋で月の歌を」で第10回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。05年『花まんま』で第133回直木賞を受賞。多くの長編・短編を著し、それらの作品に通底するのは深い人間愛である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ココ(coco)
32
☆☆☆朱川湊人さんの最近の作品です。朱川湊人さんの作品は直木賞を取った頃の方が好みで、最近のものは今一つ乗り切れない感じがします。でも結末は、衝撃的でした。2022/01/27
lily
13
貧困家庭に生まれ、知能指数は低いが周りを笑顔にするジュラを負の連鎖から救うため、派遣社員として漫然と生きていた瑠璃は彼女との逃避行を決意する。側から見れば最後はバッドエンドだが、精神的にも身体的にもジュラを必要としていた瑠璃にとっては満たされた最期を迎えられたのかもしれない。ただ設定には突飛なところもありのめり込むまでには至らず。「昔の辛い出来事なんかヘタに思い出しちゃダメよ。そんなもの何の足しにもならないからね。過去なんで、口に出さなきゃないも同然よ。どのみち、もう世界のどこにも存在しないことだわ」2023/06/10
テツ
13
親がろくでなしで知能にも問題があり、そんなこんなでヤクザに囲われ売春させられていた少女ジュラと、彼女を助けてしまった瑠璃との逃避行。自らもジュラに魅せられのめり込み、庇護する彼女を生かし幸福にすることが目的となった瑠璃の最期と、わりとすぐ瑠璃のことは忘れ生きていくんだろうなというジュラとの対比。でもその後のお話はそこで終わった人間には関係がない。その瞬間に自分の人生が満たされていたと感じられたか、全てを捧げるような愛(執着)に出逢えたかどうかだけで幸福は決まる。瑠璃にとってこれはバッドエンドではないよな。2023/06/04
こばゆみ
11
27歳派遣社員の主人公・瑠璃が、ひょんな事から20歳のジュラと出会い、一緒に悪い人から逃げるお話。そして百合要素あり。んー読みやすかったけれど、わたし的には読んで何かが心に残るとかはなかったし、かと言ってエンタメにも振り切ってなかったなーという印象でした。。。2022/02/12
菜食主義@目覚めの刻!
9
ちょっとオトコ前な感じの女性「瑠璃」とだいぶ足りない感じの女の子「ジュラ」の危険な逃避行のお話。とても過酷な環境でもひたすら天使な女の子「ジュラ」。彼女にとっては、まわりの人全てが愛すべき人なんでしょうね。そして、その愛し方っていうのが純粋であまりにも不器用で・・・。悲しい。そしてこのラスト、このお話の終わり方としては、これがベストなんでしょうね。 ただ、ひとつだけケチをつけるとすると、私なら彼女だけを攫っていきますがね。 2022/01/19