出版社内容情報
28歳の井出菫は、かつての恋人に撮られた自分のヌード写真をネットで偶然発見する。親友の百合や家族、弁護士の助けもあり、写真を消去するために動きながら、菫は元恋人・光晴との日々や彼自身を思い起こす。彼と一緒にいたとき、私が私でなくなるような感覚にいつも陥っていた……。
ひとりの女性の懊悩と不安をすくいとりながら、一歩ずつ自分の身体を取り戻す姿を描いた会心作。
内容説明
コーヒーチェーンの広報部で働く菫は、かつての恋人・光晴が撮影した自分のヌード写真をネットで偶然発見する。親友や家族、弁護士に助けられ写真を消去するために動きながら、光晴と過ごした日々を思い起こす。彼と一緒にいると、いつも自分が自分でなくなるような感覚に陥っていた―。ひとりの女性の懊悩と不安をすくいとりながら、一歩ずつ前進する姿を描いた長編。
著者等紹介
柚木麻子[ユズキアサコ]
1981年東京都生まれ、立教大学文学部卒業。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」で第88回オール讀物新人賞を受賞。受賞作を含む連作短編集『終点のあの子』でデビュー。『ナイルパーチの女子会』で第28回山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ミカママ
522
懐かしいシーンの数々から物語は始まった。どうやら「渋谷駅から青山通りを上ったところにある大学」に在籍したふたりが主人公らしい。渋谷には暗渠化した川があちこちに流れていることを、同大学出身の堂場瞬一さんの作品を読むまで、わたしも知らなかったのだが。主たるモチーフは、いわゆるリベンジポルノ。被害者となってしまった菫の葛藤と再生までの日々。わたし自身「お別れ」が上手ではないので、いろいろ過去を思いながら一気に読了。加害者側の「元彼」の心理描写さえも上手いのが、柚木さんスゴいところ。2021/01/11
さてさて
198
『誰にも知られたくない一瞬が、世界中で見られるアルバムに記録され、未来永劫、菫を責め続ける』という厳しい現実に葛藤する菫が『私、自分の裸を取り戻したいの』という思いへと一歩ずつ歩みを進めていく様を見るこの作品。『暗渠』という存在を物語世界に重層的に重ね合わせながら、主人公たちの心の在りようを細やかに映し取っていくこの作品。再び前を向くことを力強く宣言する菫の眼差しを感じるこの作品。ネット社会の怖さを改めて感じるとともに、人が再び立ち上がっていく姿の力強さ、美しさ、そして尊さに心囚われた、そんな作品でした。2022/02/09
SJW
122
内容を確認せずに買ってしまったら、苦手なストーリー。コーヒーチェーンで働く菫(すみれ)がリベンジポルノを流出され、自分の写真をネットで見つける。親友、家族、弁護士に助けられ写真を削除していくが、被害者、加害者、友達、家族の苦しみ、後悔、自分への否定が綯い交ぜになり、読んでいる方も苦しくなっくる。渋谷、代々木八幡、初台に流れる見えない水路(暗渠)を歩きながらの思いはその流れを象徴しているよう。最後に前向きに進むことができるようになった菫にほっとした。2021/07/18
馨
114
柚木さんの小説にしてはやや読みにくさもあったし、表紙やストーリーでイメージしていた内容と少し違っていました。百合ちゃんみたいな親身になってくれる友人がいると良いな。菫はたまたまネットで自分の写真を発見したけど、ネットに上がっていることすら知らない人もいっぱいいるのだろうな。他人の軽率な行動が、過去の自身の行動が、こうも家族や職場や友人に、色んな人に影響が出るとネット社会は恐ろしいなと思いました。2020/11/04
hit4papa
100
元恋人に撮らせた裸の写真が流出してしまった女子。いわゆるリペンジポルノものであり、娘を持つ自分としては怒怒怒となる作品です。初々しい学生時代の交際を経て別々の道を歩んだ男女。恋愛の引きずり方の男女差は共感できなくもありません。晒された女子の苦悩がリアルでそれを知った父親の気持ちも痛々しいですね。元恋人は、過去の戯れを、何故、時を経てデジタルタトウー化してしまったのか?逞しい女子とヘナチョコ男の結末は、真相が判明する途中経過を含めて、なんだか期待してたものと違いました。読後感は悪くはないのですが…。2021/04/08