出版社内容情報
大門剛明[ダイモン タケアキ]
著・文・その他
内容説明
時効成立を待っての自首。法によって裁かれない殺人犯は、世間を騒がせた後、何者かに殺害された―。警察は当の平成七年一家惨殺事件において一人生き残った、小岩井薫に疑いの目を向けた。一方、妻を殺され、自身も被害者遺族である原村俊介は、気にかける薫の心の奥底が見えず、行動を起こす。それが更に己を苦しめるとも知らず…。妻を巡る真相のみならず、予想外の衝撃が俊介を襲う。遺された者の生き様が、熱くせつなく肺腑を衝く劇的ミステリー。
著者等紹介
大門剛明[ダイモンタケアキ]
1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。2009年『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞をW受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaC
66
この手の話はアクロバティックな展開だと思わせてはダメですよ、大門センセー。2018/02/27
タイ子
62
舞台は長野。公訴時効廃止によって2つの殺人事件がたった3カ月の違いで時効と時効廃止になる。強姦殺人で妻を殺された時計職人の俊介、片や一家惨殺で生き残った娘薫。薫の事件は時効になるも犯人とされていた男が何者かに殺される。事件を追う元刑事と事件に巻き込まれたそれぞれの被害者たち。ぐいぐいと読ませる大門さん流の展開方法はこれまで分かってはいるつもりでも衝撃の事実に一層引き込まれていく。人は前に向かって生きなければいけない。だけど、被害者にとって時効に廃止はないのだ。ラストは少し救われる思いで良かった。2019/09/16
bibi
32
殺人罪の公訴時効は廃止された。だが、廃止以前に時効が成立した殺人には影響しない。とは言え、時間によって被害者の心の痛みが和らぐ訳ではない。2021/07/12
ぱなお
22
殺人の時効が廃止される以前の話で、時効が過ぎてから殺人を自首をしてきた犯人に対して被害者遺族はどんな感情を持つか…。もう法で裁けない悔しさと、ひょっとしたら犯人がハッキリわかってどこかスッキリした気もするかもしれない。これこそ当事者になってみないとわからないだろうなぁ。止まったままの秒針と表現するところはなかなか。でも、自分の中で腑に落ちないところもあって、ミステリーとしてはまぁまぁでした。2022/09/07
JKD
11
たとえ殺人罪に対する公訴時効が廃止されたとしても、被害者遺族としては時効なんて関係ない。被害者遺族たちの無念さ、不条理さがヒシヒシと伝わるお話でした。時効と時計の関係も美しく印象深かったです。2017/01/15