出版社内容情報
桜井鈴茂[サクライ スズモ]
著・文・その他
内容説明
東京の郊外で暮らす、しがないサラリーマン久保田輝之は、ある晩、人を殺めてしまう。自首するべきか?自殺するべきか?いや、しかし、でも…。結局はどちらも選べないまま、逃亡生活を送ることに。北は稚内から南は沖縄まで全国をさまよい歩く。はたして、輝之は彷徨の果てに何を見るのか?そして、最後に下した決断は―。
著者等紹介
桜井鈴茂[サクライスズモ]
1968年生まれ。明治学院大学社会学部社会学科卒業。卒業後は、音楽活動ほか職歴多数。同志社大学大学院商学研究科中退。2002年『アレルヤ』で、第13回朝日新人文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miww
98
妻を殺して山中に埋めた男の逃亡劇。絶対に捕まりたくないという強い意志ではなく、ただ現実を受け入れられない主人公。自首や自殺が頭を過ぎるがそれもできず、絶望、憔悴、後悔と揺れ動く姿は等身大。行く先々で出会う人たちと関わりながら2年4ヶ月を経て至ったラストは殺人犯のそれなのに妙に清々しかった。追い詰められた主人公が吐く言葉に共感する部分も多く事件そのものより、何故生きるのかとか、生きることへの執着という人間の本質・本能みたいなものを感じた作品。面白かった。2017/11/27
ma-bo
71
衝動的に妻を殺してしまった男の逃亡劇。自殺や自首がよぎったり、悪夢にうなされ、罪の意識に苛まれ懺悔する。そして出来るだけ人と関わろうとしないでおこうと思うも、深く関わる事になってしまった人との出会い。関わった人物が主人公について語る場面が挟まれる構成が良い。どんでん返しやひねりのある内容ではないからこそ、ぐいぐい読み進められた。ラストは何故か逃げてよかったと思わされる読後感。2021/02/16
mr.lupin
51
文字の小ささに少々辟易しながらも読了。妻を殺めてしまった久保田輝之の逃亡劇。北は稚内から南は沖縄まで全国をさまよい歩く。自分と言う存在を消して誰とも関わらないようにと静かに生きていこうとするけどなかなかと思うようにはいかず、読んでいても重苦しい雰囲気が漂っていた。最後の場面はきっと久保田も安堵しただろうけど、読んでいる自分自身も妙に安堵することができた。もっと早くに自首をしていれば楽だっただろうに。 ☆☆★★★2019/12/06
しーちゃん
49
殺人犯の逃亡記。衝動的に妻を殺害してしまった男が、夢中で逃げる。名を変え姿を変え、生きるために。追い詰められる心理、後悔と懺悔、様々な土地で似たような境遇の人々との出会いと友情、別れ。普通の何ともないやり取りが、何故か読者を温かい気持ちにさせるのが不思議だ。2年4ヶ月、逃亡犯の結末としては、あっけなかったが、コイツは必ず更生するだろうと思わせる。読後、何故か清々しい。2017/10/25
なっち
48
桜井鈴茂さん、初読み。買って良かった、読んで良かった1冊。妻を殺してしまった普通の男が(殺してしまった時点で 普通ではないのかも知れないが)2年4カ月にもわたり全国北から南へ逃亡する魂のクライムロードノベル。著者は市橋達也『逮捕されるまで』を参考文献にしたのかな。主人公はまだ若い。罪を償ってからでも十分人生をやり直せる。2021/09/15